不器用な僕たちは。 (ページ44)

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「私、中途半端だった。何もかも。
海斗への気持ちも見ないフリして、ずっとこのまま
ちょうどいい距離感の方がいいのかもなって。
虚しさだけが残るのに」

そっと抱きしめる腕をほどきながら離れる

「でもね、会わないって言われて
こんなに私の中で海斗が大きな存在だったんだなって
高校の時の好きだった気持ちがもっと大きくなってたんだなって気付いた」

「…Aにちょっとでも振り向いてほしくてさ、
無理矢理、縛りつけるようなこと…
俺たちちょっと遠回りしすぎたかもね」

そう言って海斗が困ったように笑った

「Aが好きです、大好き。
高校の時からAのことになると不器用になるけど
この気持ちだけは変わらない」

海斗の言葉に思わず涙が溢れる

「私も好き…海斗のことばっか考えてる
…このことに気付くのも遅いくらい不器用だけど」

「不器用同士、ちょうどいいかもね？」

笑いながら海斗が言い、そっと唇が重なる

1ヶ月以上ぶりの海斗の存在に

何度も何度も唇を重ねた

「かい、と」

「A…もっと」

そう言ってどんどん深くなるそれに思わず我に帰る

「海斗待って、仕事…」

「あ。…じゃあこれ。待ってて欲しい」

そう言って手に握らされた冷たくて固い感触。

「この取材で最後だから…すぐ帰る」

最後にちゅっとリップ音を立てて短いキスをされた後
海斗は颯爽と戻っていった