不器用な僕たちは。 (ページ27)

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「お邪魔します」

玄関で靴を脱ぎリビングに入る

「おつかれ」

ソファーでスマホをいじりながら海斗が口を開いた

「お腹すいた！ご飯作っていい？」

「まじ？助かる」

キッチンに向かい冷蔵庫を漁る

肌寒くなってきたし、
蒸し野菜にしようと調理に取り掛かる

野菜を蒸している合間に
器具の片付けをしようとすると

「…わっ、びっくりした」

海斗が後ろから腰に手を回し肩に顎を乗せる

ふわふわの髪が首筋に当たり
くすぐったくて身をよじると腰に回した手に力が入る

「…どしたの？なんか元気ない？」

「んー…なんか色々悩んだ」

「さっきの取材？」

「いや、そのあとの稽古で」

「そっか」

あまり弱音を吐くイメージがない海斗が珍しいなと
思いながら海斗の次の言葉を待つ

「どうしたか聞かないんだ」

海斗がぽつりとつぶやく

「普段からあんまり弱音とか吐かないでしょ
海斗が言う気がないなら聞かない」

「…助かる、こっち向いて」

「やだ、片付けしたい」

言葉に従わず動作を進めると
腰に回していたはずの手がするすると服の中に入る

「ちょっ…と！(笑)」

「ふは、ごめん(笑)」

「構ってちゃんか！」

「構ってちゃかちゃん？」

笑い合ったあと、ちゅっと音を立てて短いキスをする

こんなやりとりも
恋人だったら幸せな一場面なのに。

一瞬の幸せの裏側にある虚しさに

今だけは、とまた見ないふりをした