短編集【wrwrd】 (ページ9)

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結局ゾムは焼肉屋さんの定番メニューをほぼ全て頼み、それなのに「とりあえずこんなもんでええか」とまだまだ注文します宣言をした。知り合った当初は「全部食べきれるのかな」という心配をしていた時期もあったが、今は彼の胃袋がブラックホール並みであると知っているのでもう気にしない。

「遠慮せんでええねんで」

注文を待つ間、私がウーロン茶を飲むのを見ながらゾムが言った。

「お前が食えんかったのは俺が全部食ったるし」

少食な私が少しでも食事を楽しめるように、ゾムはいつも考えてくれる。バイキングに行っておすすめの料理があれば色んな種類のものをほんの少しずつ取ってきてくれるし、それがスイーツビュッフェだったとしても「これうまいで」と一口ずつ分けてくれる。

豪快で大雑把、いたずらっ子のように見えて、彼は存外優しいのだ。

「お前が飯幸せそうに食っとんの見んの、好きやねん」

だからゾムは決して私に無理はさせない。彼と付き合い始めてから、食事を残す罪悪感のためにたくさん種類を食べることを我慢することは減った。ゾムのおかげで私は思う存分食事を楽しめている。残したくなくて苦手意識を持っていたけど、今では食事は幸せの象徴だ。

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