短編集【wrwrd】 (ページ5)

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感謝を伝えよう sha ページ5

⚠️兄妹

お兄ちゃんは正直ウザい。

私が何か失敗するとすぐに煽ってからかってくるし、私の発育の遅い胸について散々「まな板」だの「絶壁」だの笑って馬鹿にしてくる。

私は私でお兄ちゃんが彼女と喧嘩別れしたり何か失敗をする度にここぞとばかりに煽るものだから、お母さんはいつも「お互いさまね」とため息をついている。

そんな喧嘩ばかりの似た者同士、私たち兄妹だけれど。

私が本気で落ち込んでいる時、体調が悪い時。兄はふとした時に優しくしてくれる。きっと外でもそうなのだろう、そのいわゆる「ギャップ萌え」「ツンデレ」とやらに女の子たちは釣られてしまって、あんな奴のくせに元カノの数はそれなりだ。今はフリーらしいけど。

まあそれは置いておいて。今日はそんな兄の誕生日なのだ。

スマホのカレンダーアプリが今朝知らせてくれたものだから、この日を忘れていた私は大変焦った。とりあえずメイクも髪もそこそこに家を飛び出し、最寄りのショッピングモールに向かったのである。

お兄ちゃんは友達とご飯に行くらしく昼前に出ていった。焼肉がどうとか言っていたのできっと仲間内での誕生日祝い。彼女がいたら誕生日はデートで出掛けることもあったけど、今はいないみたいだから多分夕方には帰ってくる。帰ってこなかったらどうせしこたま飲んでベロベロで夜中に帰ってくるに違いないけど。

ショッピングモールの1階。ゲームセンターの真隣の家電量販店。デュエルスペースを構えたゲームショップもある。ここはクリスマス時は子どものために奮発するお父様方でごった返している。兄の誕生日が12月じゃなくてよかったと心底思う。

兄が最近ヘッドホンの調子がおかしいと言っていたのを覚えていたので、道中頑張って検索したのだ。なかなか良いお値段がするのでATMに寄り、スマホ片手に目の前の大量のヘッドホンたちとにらめっこ。

こっちが軽くて良いだろうか、でもこっちは音質が良いみたい。こっちはお兄ちゃんの好きな黄色が差し色に入ってる。でもちょっと高いかも……。

ああだこうだと15分以上悩んだ結果、電化製品に詳しくない私は大人しく店員さんを呼んだのであった。