短編集【wrwrd】 (ページ26)

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「ただいま」

「ゾム！」

大好きな声で名前を呼ばれてドキッとした。なんで。仕事しとったんちゃうの。

ぱたぱたスリッパを鳴らしてリビングから駆け寄ってきた彼女は、申し訳なさそうに眉を下げた。

「ごめんね、やっと仕事終わったよ」

「やっとか」

「うん、やっと」

俺の手からビニール袋を奪って、Aはリビングに戻っていく。靴を脱いで後に続くと、ノートPCはもう片付けられとった。
よし、もう明日まで触らせへん。

「あ、このアイス！」

「この前売り切れとったやん」

「やった〜！ありがとう！」

俺、単純やな。さっきまであんだけ拗ねとったのに、この嬉しそうな顔をみたら全部もう許してまいそう。

「あとで食べよな」

「先にご飯だね」

歌い出しそうなほど機嫌の良いAを見て、たまらんくなった。

冷蔵庫に買い物を入れとる背中に抱きついて、さっきより強く抱き締める。

「……寂しかってん」

「うん。ごめんね。待っててくれてありがとう」

「Aからキスしてくれたら許したるわ」

ぶわっと顔を赤くした彼女は、まんざらでもなさそうに俺の頬に手を添えた。