短編集【wrwrd】 (ページ24)

今日:24 hit、昨日:33 hit、合計:13,404 hit

かまってや zm ページ24

約束したやん。なんで破るん。
今日は俺もAも休みだから、二人でゆっくりしよなって。
言ったやん、なあ。

「A」

「んー」

「いつ終わるん」

「……あとちょっと」

PCから目も離さんと言われても説得力無い。ていうか「あとちょっと」って何回目や。朝からずっとやん。

「もう昼やで。飯食おうや」

「先食べてていいよ」

は？それはひどいんとちゃうか。
せっかくの休みやん。飯くらい一緒に食ってくれてもええやろ。なんでそんな無視するん？

「A、なあ……」

「……」

聞こえているのかいないのか、もう完全に返事がなくなった。

わざと足音を立てながらAの後ろに回る。小さな背中が丸まって、いつも俺だけ見てくれる目が画面に奪われている。

覗き込むと、なんかパワポで作っとる。プレゼンでもあるんか？ええやん明日も休みなんやから。頑張るAも健気で可愛いし好きやけど、俺との約束破ってかまってくれへんAは嫌や。

「なぁ〜A〜」

細い首に腕を回して抱きしめる。彼女は「んー」と呻いて眉間に皺を寄せるだけ。なんなんその反応。Aは寂しくないんか。俺はもう限界なのに。

「約束したやん…」

「ごめんね、これ終わったらね」

取り付く島もない。「重いよ」と腕も押しのけられて、悲しくなった俺はAから離れる。

姿が見えるから寂しいんや。触れる場所におるから、かまってもらえんのが余計寂しい。無機物に負けとるんも悔しいやら悲しいやら。

気分転換でも、と寝室から上着と財布を取ってきて玄関に向かう。目の前におるのにお預け食らうのめちゃくちゃしんどい。

「コンビニ行ってくるなー」

「んー」

聞いとんの？それ。何か怒らせたかな俺。

ため息をついて扉を開けると、強風が吹き込んできて俺の髪をぐしゃぐしゃに乱した。そういえば最近春一番がどうとかニュースでやっとった気する。