短編集【wrwrd】 (ページ21)

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勇気のきっかけ kn ページ21

⚠️セクハラ、パワハラ表現有り

「辞めさせていただきたくて」

意を決して口にした言葉に、やや驚いたような間があって。通話相手は小さく息をついた。

「一応、理由を聞いてもいい？」

「……課長が」

震える声を抑えて、できる限り冷静に話すようぐっと歯を食いしばった。

「パワハラや、セクハラが」

「……そう」

いつも優秀で気配り上手、バリバリ働く現役OL。そんなみんなの憧れの的である部長が、悩ましげに相槌を打つ。いつも明るい人なのにこんなに低いトーンで話すのは珍しい。

「詳しく聞いていい？」

そうだよね、話さなきゃダメだよね。

デリケートな話題だから緊張してしまって、スピーカーモードにしたスマホを挟んで目の前、真剣な顔をしている恋人を見やる。「1人で話すのは怖いからそばにいて」とお願いしたのだ。

不安そうに見やる私に気づいて、彼はこくりと強く頷く。一見すると冷たい瞳も、私には「自信持って言え」と背中を押してくれているように見える。少し安心して、噛んでいた唇が少し緩んだ。

落ち着いてゆっくり。シュミレーションした内容を思い出し、脳内で未だ自慢気に語る課長の言葉を真似した。