短編集【wrwrd】 (ページ15)

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ということで。
いわゆるポニョのラーメンである。茹でた袋麺にゆで卵とハムを乗せただけの簡素なやつ。最後の晩餐がこれで良かったのだろうか。いやこれしかないんだけど。

「見てトントン。卵上手くできた」

つるりと剥けた卵を半分に切ると、黄色とオレンジの黄身が現れた。周りの白身もボロボロにならずに剥けてちょっと嬉しい。

「天才やん。うまそ」

味玉もないしチャーシューもない。全部が代用品のポニョのラーメン、完成。

スープをこぼさないようにリビングに運んで、2人で手を合わせた。
ほこほこ湯気が立つ器からは醤油のいい匂いが漂う。私は猫舌なので、さっきまで冷蔵庫に入っていたハムから頂いた。

「ウマ」

「ね、いい感じ」

「袋麺に成功も失敗もないけどな」

感動するほど美味しいわけでもないいつもの袋麺は、変に特別なものを食べるより安心した。

もう健康に気を使っても仕方ないのでスープまで飲み干して、どんぶりと箸はシンクに置いて水も貯めずそのまま。

「トントン」

「あん？」

今度はトントンがソファを占拠していた。私はその膨らんだお腹を撫でて彼の膝に頭を乗せた。

「腹触んな」

「いいでしょ最期なんだし」

見上げると彼は口を噤んだ。いつもは言い返してくるのに今日は甘い。いつも通りに過ごそうとしたんだよね、几帳面で真面目なあなただから。