最期のラーメン tn ページ14
明日世界が滅ぶらしい。
陰謀論とかデマとかじゃなく、どうやらこれは事実らしく。
そんな報道があってすぐ、テレビは映らなくなった。当たり前だ、あと一日で全人類死にますなんて時に仕事する奴なんてそういない。
当然スーパーやコンビニもやってない。世界最後の日にレジ打ち品出しなんてやる馬鹿はいないからだ。しかし責任者までもヤケになったのか施錠もされていないので入り放題、盗り放題というわけである。
こうなるともう無法地帯だ。どうせ死ぬのだからと人間は欲望を堪えなくなった。各地で人が殺されて、破壊行為が横行し、暴行や強盗も当然のように行われているようだった。
そんな中、幸い誰かに恨みがあったりどうしても成し遂げたいことがない私たちは自宅に引きこもり、最期の時を2人で過ごしていた。
「ラーメン食べたいな」
リビングのソファを占領し横になりながら私は呟いた。床に寝そべるトントンはため息をついた。
「ラーメン屋がやっとる訳ないやろ。カップ麺でも食っとけ」
「そうだよねぇ……あーあ、帝国ホテルのアフタヌーンティー行きたかったのに」
「全部食欲やんけお前」
仕方ないでしょ、美味しいものは世界を救うのだ。
いや、この状況はもう救えないけど。
豚のクッションを枕にスマホと格闘していたトントンは、動かないそれをついに諦めて放り投げた。
「やっぱダメ？」
「ネットが死んでんねやろな」
連絡の取れなくなった友人たち。心配したってどうせ明日にはみんな死んでるし、最期に伝えたいことがあったわけでもなく。
「とりあえず何か食えば食欲は無くなるんちゃう」
ラーメン屋も帝国ホテルもやってないけど、何も食べないよりはマシである。とりあえず私はキッチンの戸棚を漁り、トントンは冷蔵庫を漁った。
「ハムと卵。あと酒しかない」
「醤油ラーメンあるよ」
「ええやん」
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作者名：笹弥(ささみ) | 作成日時：2024年2月13日 13時
