無効化少女

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第五話ページ5

「私はオールマイトさ」

そう言いながら吐血する自称オールマイトさん

『ちょ、大丈夫ですか⁉』

急な吐血にびっくりしつつもボクは手持ちのハンカチを渡し、出久の方に下がる

「プールで腹筋を力み続けている人がいるだろう。アレさ！」

「ウソだああ！！」

『出久、煩い…』

衝撃の事実に混乱して否定する出久
気持ちはわかるけど声でかい…

「見られたついでだ少年少女。間違ってもネットには書き込むなよ」

オールマイトさんはそう言いながらその場に座り込み自身のシャツを捲った
シャツの下はとてもじゃないが悲惨な傷跡がありボクは息をのんだ

「5年前…敵の襲撃で負った傷だ」
「呼吸器官半壊、胃袋全摘。
度重なる手術と後遺症で憔悴してしまってね

私のヒーローとしての活動限界は今や一日約三時間ほどなのさ」

ヒーローの惨い裏側の現実にボクは声が出なかった

「これは世間に公表されてない。公表しないでくれと私が頼んだ」
「人々を笑顔で救い出す"平和の象徴"は決して悪に屈してはいけないんだ」

次々に語られていくヒーローの現実

「私が笑うのはヒーローの重圧。そしてうちに湧く恐怖から己を欺く為さ」
「プロはいつだって命懸けだよ。『個性(ちから)がなくとも成り立つ』とはとてもじゃないがあ…口にできないね」

ボクはともかく出久には相当なショックなはず
隣の出久をちらりと見るが顔には絶望が張り付いていた

「人を助けることに憧れるなら警察官って手もある
『ヴィラン受け取り係』なんて揶揄されちゃいるが、あれも立派な仕事だ！」

オールマイトは立ち上がり、そう言いながらドアの方へ歩いていく

「…夢見るのは悪いことじゃない
だが…相応に現実も見なくてはな。少年」

そう言って去っていったオールマイト。
屋上に取り残されたのはボクと出久だけ

『…出久、大丈夫…？』

「え、あぁ…うん…」

明らかに元気がない
そりゃあそうか。憧れの人から夢を否定されたんだから
誰が悪いでもない。仕方のないことなのだ

『…帰ろっか、出久。』

その場に立ち尽くした出久に声をかけると、出久は無言で頷きドアの方に歩いていった