我が家の忠犬 (ページ8)

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『暖かくなってきたねえ、ケン』

「散歩の時間長くなるから春が1番好きやで」

…冬の間、寒いからって散歩の時間5分短くしてんのバレてたか

リビングの窓際に腰掛けて日向ぼっこする私

庭で楽しそうにゴロゴロするケン

平和やなあ、なんで呑気な気分でいると

「うおぁっ！？痛～！！！」

『「！？」』

バサバサッ、というすごい音と共に

庭の植え込みに落ちてくる黒い影

『え、なに？』

「…っつ、痛いわ～」

葉っぱだらけになりながら出てきたのは

黒っぽい耳がぴん、と立った男の子

シュッとした身体つきとしなやかな尻尾…

『…もしかして…』

「あのー、大丈夫？怪我してへん？」

心配そうにケンが訊ねる

「大丈夫っすよ！これでも一応猫なんで！」

少し自慢げに胸を張る

「ならよかった、あ、僕ケンていうねん」

「自分はキョウヘイていいまっす、」

いやいや、仲良くなるのはいいねんけど…

『えっ、と…キョウヘイくん？』

「はい！キョウヘイっす！」

ニコニコ、こっちを見る

…猫ってこんなに人懐っこいもんなんかな

『そのー…君はこの辺のお家の子？』

鈴つけてるみたいやし家猫やと思うんやけど

「それがっすね～…俺実は迷子なんすよ」

『迷子、』

「いつもうちのベランダに遊びに来てくれるジョウくんについて行ったんすよね」

でも途中で見失っちゃって、どうしよ～て焦ってたら塀から落ちたんすよ」

それがうちの庭やったのね、

「…ふんふん…」

『え、ケンどうしたん急に』

キョウヘイくんの首元に顔を近づけるケン

『…もしかして匂いでキョウヘイくんの家が分かる、とか？』

「ん～…多分やけど分かんで」

「まじすか」

「家まで送ったる、な、お嬢？」

『…散歩のついでね、』

「まじ助かります！あざっす！」

…今日が暖かい日でよかった、