弐拾玖話 ページ29
「うーーん....」
芙美子は悩んでいた。
その悩みの原因は、目の前の小さい女の子。
およそ5歳くらいだ。
ソファーに座り、思案顔でじっと女児の顔を見る。
探偵社に相談に来ていた人の接待をしていると、急に子どもを預かってほしいというのだから驚いたものだ。
芙美子も最初は「ここは子どもを預かるところではありませんので」と丁重に断ったのだが、母親の懇願する顔を見ると、どうしても断りきれなかった。
渋々といった様子で引き取ったのだが、困ったものだ。
子どもは実に手のかかる生き物で、仕事ができないどころか、目が離せないのだ。
「ねえ、おねえちゃん、あそぼ!」
「そうね、遊びましょうか」
悩んでいた顔を引っ込め、すぐ笑顔になる。
子どもに罪はないし、何より癒しだ。
芙美子は女児を抱き上げ、国木田に「ごめんなさい、少し公園に行ってくるわ」と断りを入れてから近所の公園に向かった。
公園につくと、女児をおろす。
「寒いからちゃんと上着は着てなきゃダメよ」
百センチくらいの小さな女の子と目線を合わせ、語りかける芙美子に、女児は元気よく頷いた。
「おねえちゃん、おなまえは?りこはりこっていうの!」
「可愛らしい名前ね。私は芙美子よ」
「おねえちゃんのおなまえも可愛いね!」
「ふふ、ありがとう」
口元に手を当て花のように笑う芙美子と、効果音がつきそうなくらいの笑顔のりこ。
そんな二人を見ている影があった。
「どうしてこんな所にいるんだい?」
「あら、太宰。ちょっと事情がね」
立ち上がり、芙美子の横まできた太宰を見る。
太宰は芙美子の後ろにいるりこを見つけた。
「その子は....まさか、隠し子!?」
「断じて違うわ」
「なーんだ。でもこうして見ると親子みたいだね」
語尾にハートマークがつきそうな喋り方をする太宰。
芙美子はジト目でそれを見ていたが、よくよく見てみると確かに親子のようだ。
「お姉ちゃん...抱っこ」
「あら、遊ばなくていいの?」
「ちょっとだけ...」
芙美子がりこを抱き上げると、りこは太宰と芙美子の顔を交互に見た。
「ぱぱ、まま」
「まま!?」
「やはり夫婦に見えてもおかしくないんだよ、芙美子!」
「ふ、夫婦......」
少し照れくさいが、悪い気はしないなと芙美子は思った。
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麻月☆(プロフ) - 暁美 萌さん» ありがとうございます!!励みになります(*˙˘˙*) (2017年12月20日 6時) (レス) id: 2189571e01 (このIDを非表示/違反報告)
暁美 萌 - 面白い!!気に入りやした\(^∀^)/ (2017年12月19日 23時) (レス) id: 138e63448f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:麻月☆ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/my3126rk5/)
作成日時:2017年2月9日 23時