拾弐話 ページ12
夜風が吹いている。
月夜に照らされた二つの影。
「幼い頃は誰かに内緒でよく二人で会ったりしたわね」
「そんなこともあったね」
ヨコハマの街並みを見渡せる高台に男女が二人。
黒髪をなびかせる女性、芙美子はどこか寂しそうに街を一望する。
「....なんだか淋しいわね」
「どうして?」
「だって、記憶のなかった時間があるんですもの。ずっと愛すべき人が目の前にいたというのに、私ったら気づかなかったわ」
落ち込んだように肩をすくめる芙美子は隣にいる男性、太宰を横目で見る。
太宰はその視線に気づき、愛おしそうに見つめ返す。
「あなたったら、本当に私のことが好きね」
「君も私のことが好きだろう?」
「....はぁ、あなたには叶わないわ」
幸せそうなため息をひとつついた芙美子。
そんな二人を暗闇の中から聞こえる拍手が遮る。
「はいはい、バカップル。そこまでですよ」
白い髪が暗闇に映える。
紫色の双眸がじとーっと二人を眺める。
「ゆき子.....」
「先輩、痛みはそうです?」
ゆき子が芙美子に近づき、首をかしげて尋ねた。
芙美子は「なんともないわよ」と答え、目を伏せながら云った
「何がしたかったの」
「はあー........もう、太宰さん。云ってないんですか」
「薬については云ったよ?」
「もう..........」
呆れ顔でゆき子がため息をつく。
そんなゆき子に小首をかしげる芙美子。
ゆき子はそんな芙美子を見てゆっくりと口を開いた。
「先輩をとられたくなかったんです」
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麻月☆(プロフ) - 暁美 萌さん» ありがとうございます!!励みになります(*˙˘˙*) (2017年12月20日 6時) (レス) id: 2189571e01 (このIDを非表示/違反報告)
暁美 萌 - 面白い!!気に入りやした\(^∀^)/ (2017年12月19日 23時) (レス) id: 138e63448f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:麻月☆ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/my3126rk5/)
作成日時:2017年2月9日 23時