約束【桃】 (ページ12)

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『もう高校生だし、照って呼んでみようかなって』

照「なんだよ、それ」

呼び捨てかよ、なんて目尻を下げて笑いながら歩き出す照が可愛くて、やっぱりひーくんでもいいかもな、なんて思ってしまう。

『嫌じゃない？』

照「別に。…まぁ彼氏(仮)だし、いいんじゃない？」

『彼氏(仮)？…ってなんだっけ？』

するとまた立ち止まって信じられないというような顔をしてこちらを向く。

照「はあぁぁぁ！？！？お前覚えてないの！？」

『うそうそ！覚えてる！ってか照こそ覚えててくれたんだ』

照「なにそれ…当たり前じゃん。ずっと俺だけそのつもりだったのめっちゃショックなんだけど」

ずっと繋いでいた手を離されて再び歩き出した照の大きな背中は、シュンと小さくなって明らかにいじけていた。

『あの、さ、照がもし良ければだけど…まだしばらく
彼氏のフリ、しててもらえないかな？
今日みたいなことがあったらまだちょっと怖くて…』

照「最初からそのつもりだけど」

「…ありがと」

照「俺が守るって言ったじゃん」

『あ、でもでも好きな人できたらいつでも言ってね？
照の邪魔はしたくないから』

三度目に足を止めて振り返った照は真っ直ぐな目でこちらを見つめてきた。

『え？なに？どうしたの？』

わたしの質問には答えずに、一歩二歩と近付いてきて目の前まで顔を近付けられる。

至近距離で見つめられて耐えきれずに思わずギュッと目を瞑ると、

おでこに走る痛み。

『…いったぁ〜！』

照「ばーか」

『なに！？なんでデコピンするの！？』

照「Aがわけ分かんないこと言うから」

わけ分かんないのはこっちなんですけど！？

困惑しながらスタスタと歩き出す照の背中を追いかける。

照「あ、そういえば俺とふっかダンス部に入ることにしたから」

『え？そうなんだ！照とふっかが踊ってるとこ見たい！』

照「まぁ、いずれな。…だから一緒に帰れなくなる」

そっか…。

中学時代、いつも三人で帰ってたから少し寂しいな。

そんなわたしの気持ちを察したのか照はポンポンと頭を撫でてくれた。

照「そんな寂しそうな顔するなって。練習ない日は一緒に帰れるし」

照「…だからと言ったらなんだけど、朝一緒に行かない？俺通り道だし」

『え？いいの？』

照「うん、迎えにくるから待ってて」

迎えにくる。

その言葉がなんだか懐かしいような気がした。

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