その手を取って

♯16 ページ16

髪をかきあげてた手に太輔の手が重なり、その反動で顔を上げると
太輔の唇が傷に触れ、ちゅっと可愛らしい音を立て離れた

びっくりして太輔を見つめれば、穏やかな笑顔で

「大好きな仕事で出来た傷なら勲章だよ！だから何も引け目を感じなくていいし、この傷も大好きだよ」
「...太輔」
「見せたくない傷を見せてくれてありがとう 今の宏光も大好き...だからこの傷ごと俺の物になって」

太輔の手が離れ、今度は俺を包み込む様に抱きしめる
髪をかきあげていた腕がズルズルと滑り落ち、太輔の肩に
このまま抱き締め返していいのだろうか…
こんな俺でもいいって言ってくれたこと、傷が勲章だよと言ってくれたこと
それだけで今まで重くのしかかってた行き場のない気持ちが浄化されてく

「...たい...す...け」
「ん？」
「.......」

言葉が出てこないからギュッと首の辺りに腕を廻し、太輔の肩におでこを付けて涙を流す
ぽんぽんと背中をあやす様に叩かれるから益々流れ落ちていき、暫く無言で抱き合っていた





泣き止んだのを感じた太輔が″大丈夫？″といいながら引き離し顔を見ようとするけど、泣き顔なんてみられたくないし、さっきは勢いで傷を見せたけど今まで隠して過ごしてたのもあり、見られるのはまだ慣れなくて戸惑ってしまう

それでも太輔は目尻や頬、おでこ顔中至る所にキスを落とし、最後は優しく唇に降りてきた

あの夕日をバックに初めてキスをされた時とリンクして、動けずにいる俺に少し唇を離し
″撮影してないから動いても声を出してもいいよ″ってからかわれ、再びキスを仕掛けてくる

「ん...っ」
「可愛い...」
首に巻いていた腕は太輔の服を掴み、縋って応える

暫く堪能され太輔の手が服の裾から侵入してきたのに慌てて服の上から動きを止める
このまま太輔と...ってのは不安もあるけどそれより...

「まっ...てっ」
「待てないんだけど...でも宏光が嫌なら無理強いはしたくない」
「...嫌というか...シャワーだけでも...」

太輔と抱き合うのは嫌じゃない
このままいけば多分俺が抱かれる側
だからせめて少しでも綺麗に...と思い口にしたのに

うーんと考える素振りをしてニコっと笑った太輔が
又してもキスをしてきた
しかもさっきまでのキスじゃなくディープキスになってきて、暫く堪能され離れた時には、ぼーっとして軽い酸欠状態

そんな俺を一緒に立ち上がらせ″掴まって″と言われ、首に腕を巻き付けるとお尻の下から抱き抱えられそのまま移動し始めた

♯17→←♯15

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す