検索窓
今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:35,356 hit

- ページ15

「……すみません」
「はい。反省しなさい。
それに、普通察するものなのでは?」
「え、何をですか?」


思わず心の声が飛び出した。
条野殿ははて、と首をかしげ、一言呟く。


「……貞操の危機とか」
「え、条野殿って冗談言えたんですか」
「冗談なんて言いませんよ」


そう言った条野殿は、犯罪者をなぶる時のあの愉しそうな笑みを浮かべる。
いざ向けられると怖いものだ。


「ほら、」
「っ、ん」


不意打ちのように、唇を塞がれる。
いやいや、これは逃げようも防ぎようもない。
唇に触れたそれが想像よりずっと熱くて、頭がくらくらする。
条野殿程の耳が無くても、心拍数がドッと上がったのが分かる。
しばらくの後に、口が解放された。


「実行してしまえば冗談などではありませんからね」


こっちは乱れた息を整えてる真っ最中だというのに、条野殿は息一つ乱さずいとも愉しそうに言葉を紡ぐ。


「おや、心拍数が上がりましたね。
こんなに速いと早死にしますよ」
「……その時は条野殿を訴えるよう遺書に書いておきますね」


そう返せば、条野殿はくす、と笑う。
……あ、その笑い方、好き。
思わず出た、みたいな自然な笑顔だ。


「本当、貴女と話すと飽きない。
ずっと話していても、きっと飽きないですよ」
「……それは、どうも」


そう返せば、今度は呆れたように笑われた。


「……本当、鈍感な人だ」
「はい?」
「Aさん、好きですよ」


……そんなこと、一言だって言われてないもの。理解しろ、なんて無理ですよ。

そう軽口を返す代わりに、覆い被さる条野殿の背に腕を回して、「私もです」と小さく呟いた。




2019/8/5 硝子屋

▼.朝に咲いた嘘の造花→←▼.喉に詰まった菊の花



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (68 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
109人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

硝子屋(プロフ) - 猫また猫さん» 了承ありがとうございます。リクエストですね、少々お待ちください…… (2020年2月24日 23時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - すみません夢主ちゃんと社長は結婚していない設定でお願いします (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - 硝子屋さん» リクエスト失礼しつれいしますね!!福沢社長で子どもを預かる話をリクエストしたいです社長と夢主ちゃんは結婚している設定で (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
- あ、全然混浴でなくても大丈夫です!無理をさせてしまいすみませんでした (2020年2月24日 15時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
硝子屋(プロフ) - 乱歩信者さん» リクありがとうございます!少々お待ちください…… (2020年2月20日 21時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:硝子屋+ソーダ | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年1月25日 6時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。