▼.喉に詰まった菊の花 ページ14
「……あの」
「なんでしょうか」
なぜこんな状況に?……と、思わざるを得ない。
寝台に押し倒されて、手首を掴まれたまま寝台に縫い付けられている。
無明のその人の耳飾りが揺れて、鈴がしゃら、と微かに鳴る。
はてさて、私は気に触れるようなことをしてしまったのだろうか___いや、それならすぐに殺されただろうな。
「……私、____」
「ああいえ、貴女自ら言っていただく必要は全くありませんよ。
別に私は怒ってませんから」
……心を読まれた気分だ。
じゃあ、一体何だと言うんだ。
“猟犬”に所属する条野殿は何を考えているのかいまいちわからない。そのくせ、私の思考は探偵でも吃驚なほど一瞬の内に鮮やかに読み取ってしまうのだからずるい。
「……ふむ、心拍数が上がっていますね。緊張ですか?」
「いえ、恐怖かと」
そう返せば、条野殿はそうですか、と笑みを浮かべる。そして、すう、と私の唇を人差し指で撫でた。いつもしている手袋を外した手は白く細く、でも確かに男の人の手だ。
「あの、ずっと気になっていたんですが」
「はい」
「条野殿は本当に目が見えていらっしゃらないんですか?」
そう問えば、条野殿はふ、と薄く笑みを浮かべる。そして、「どうしてそう思ったんですか?」と問いかけてきた。問いを問いで返すとは不作法だろう。
……なんて、思っても言えるはずなかった。
「いえ、見えてないのによく的確に触れるな、と」
「あぁ、成程。
視覚がないのは確かに大きな不利要素ですが、それ以上に他の感覚が発達していれば十分でしょう」
……そういうものなのか。
常人にはよくわからない感覚だ。まあ、そこのところは“猟犬”に所属する者特有、ということにしておこう。
……いや、それよりも。
「Aさんは危機感がありませんね。ああいえ、不安はあるようですが」
「え?」
「あと察知能力も鈍感です。
人の機微に疎すぎる。私でもわかるくらいなのに」
“猟犬”と一般軍警を一緒にしないでいただきたいものだ。
109人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
硝子屋(プロフ) - 猫また猫さん» 了承ありがとうございます。リクエストですね、少々お待ちください…… (2020年2月24日 23時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - すみません夢主ちゃんと社長は結婚していない設定でお願いします (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - 硝子屋さん» リクエスト失礼しつれいしますね!!福沢社長で子どもを預かる話をリクエストしたいです社長と夢主ちゃんは結婚している設定で (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫 - あ、全然混浴でなくても大丈夫です!無理をさせてしまいすみませんでした (2020年2月24日 15時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
硝子屋(プロフ) - 乱歩信者さん» リクありがとうございます!少々お待ちください…… (2020年2月20日 21時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:硝子屋+ソーダ | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月25日 6時