小さなMXの物語 (ページ18)

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ぼーっと歩いていると耳によく知った声が入ってくる

その声に反応してチラッと振り返ると少し遠くに彼の姿を見つけた

そういやここ彼の会社の近くだ

足が彼の方を向き歩こうと1歩踏み出した途端
彼の影から一人の女の人が見えて思わず出していた1歩目を引っ込める

…同じ会社の人かな
何か行きにくい

歩きだしたその二人が進む後ろを密かにつけてしまう

私って本当に最低
こんな事やめよ

ふと我に返り別の道に入ろうとした瞬間
彼の腕に手を回す姿が目に入る

このまま見るとどん底に落とされそうだと思いながらでも視線を外す事なんて出来なくて

それに答えるように今度は指を絡めて手を繋いだ

……彼から

これが浮気現場ってやつか

どこか冷静に見てる自分とその気持ちとは正反対にドクドクと音をたてる心臓

まるで思考と体が別になったみたいな感覚

何分経っただろう

もうあの2人はとっくに行ってしまったのに重い足はなかなか動こうとしなかった

『…帰ろ』

わざと口に出しやっとの思いで重い足を動かす

自分のマンションの前の小さな公園まで辿り着きとりあえずベンチに腰をかける

昨日告白されたばっかなのにな…

〈大学の時から好きだった…でもキヒョンと付き合ってると思ってたから…〉

〈久しぶりに会って気付いちゃって。今でも俺の気持ちは変わってなかったって〉

そう言われて浮かれてた

「Aは好きって言われたらすぐ好きになるだろ？」

『いい事でしょ？』

「人を好きなることはいい事だけど、Aの場合まず疑ってかかれって」

『なんで？好きって言ってくれてる人疑うの？』

「疑うって言い方悪いけど良い奴かとか自分の事本当に好きかとかちゃんと判断しろって事。それからだろ。好きになるのは。…じゃないと俺が困る」

『う〜ん…ん？キヒョンが困るの？』

「…そうだよ。また呼び出されて相談のらなきゃいけなくなるからな」

前にそんな事を言われたのを思い出す

キヒョンごめんね

やっぱり言う通りだった