小さなMXの物語 (ページ11)

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好みのコーヒーを飲みながら現実にふと戻る

『ウォノ先輩は…残業ですか？』

「いや、Aちゃんにちょっと伝えたい事があってさ」

『私に？』

「うん。でも誘われてたからいつ間に入ってやろうかな〜って見てた」

『え？』

「でもちゃんと断ってたから。えらいえらい」

納得するように頷きながらコーヒーに口を運ぶ

…何か
勘違いしそう

今までウォノ先輩とは少し仕事の話をしたりプライベートな話はこの店美味しいよとかそんな話しかした事がなかった

仕事はできるしイケメンだし上司との付き合い方だっていい距離感で完璧な人
そんなイメージ

私との接点なんて…

手組まない？

あの意味って？

「あいつからよく誘われる？」

『え？』

「さっきの」

同僚が出て行った方向をチラッと見る

『まぁ…。でも同期なんで仲良くやっていこうとしてくれてるんだと思います』

「はぁ…」

静まり返ったオフィスにこれでもかと響くため息

「甘いなぁ。ほんとに」

その言葉と共にコーヒーを置いてネクタイを緩めながらゆっくりこっちへ近付いてくる

『え…ちょっ…ウォノ先輩？』

椅子に座っているためこれ以上後ろに行き場はなく
どんどん距離が縮まる

息がかかりそうな距離に思わず目をグッと閉じる

「これでも同じ事言える？」

鼻と鼻がぶつかりそうな距離でちゃんとした思考なんて停止している

「ごめん。やりすぎた」

あっという間に元の距離に戻る

でももう心は元には戻らなくて…

きっと顔は真っ赤に違いない
恥ずかしくなり両手で頬を覆う

「あいつだよ彼氏って」

『…え』

「Aちゃんに暴言吐いてた子の彼氏」

ウソ…
勝手に彼女はいないと思ってた

だって…

今までの誘いも気遣いも彼女がいるとなると別だ

あんな誘ってくるくせに彼女いたわけ？

その彼女に八つ当たりされた？

そういうこと…

「Aちゃん？」

『何か…腹立ってきた』

「ふふ…だろうね」

嬉しそうに微笑む姿にふと過る

『ウォノ先輩…』

「あ、俺悪い事してないよ？他の子からちょっと聞いただけ。…ね？俺の事味方にすると心強いでしょ？」

手組まない？ってこういう事？

この事がわかっただけでもモヤモヤは無くなり今日の私は救われた

『ありがとうございます。本当に』

「ん？まだだよ？」

『え？』

「これからでしょ」

片方の口角を上げて笑う顔に何か企んでいるとわかるけど…

目が離せなかった