268話 ページ29
No side
そこは、堅牢と名付けるのにふさわしい場所だった。
赤と黒、そして金に彩られた装飾品は、見る者が見れば名のある名匠の作品であることがわかるだろう。そして、同時にそれらに値がつけられないということも。
そのような調度品が並ぶそこは、豪奢でありながらしかし、どこか作り物めいていて、訪れる者に威圧感と畏怖を与えることを目的とされているような部屋。
その部屋の中心、巨大な窓を背にするように設置された書き物机に、一人の男が座っていた。黄金の髪と、紅にも青にも見える不思議な瞳を持つ男は、肘をついてデスクの上に置かれていたモニターを見ていた。天空から俯瞰したような構図で映っているそこは、芸術作品と呼んでも差し支えないほどに美しい白亜の城が映っている。
無言のままに画面を見つめていた彼の表情が、不意にほんの少しだけ動く。その双眸は、白亜の城の一角の窓から顔を出し、こちらを見つめている人間の姿を認めていた。
鳥を模して作られた機械のレンズ越しにその人間を＿＿彼がよく知る少女の姿を見つけた男は、彼女のその表情を見て、そして、
「おい」
特徴的なバリトンボイスで、その傍らで何やら書類と格闘していた人間に向けて声をかける。格闘していた、赤いマフラーを巻いた人間は、その声を聞いて「何や？」と顔を上げ、そして少なからず驚いた表情を作る。
「……どないした？ なんか良いことでもあったんか？」
彼が言うところの、良いことがあったかのように。そして、一般に言うところの邪悪な表情で、彼はニヤリと口元に弧を描いていた。瞳が、緩やかに細められる。
「
＿＿＿____戦争だ」
＿＿＿＿＿その口から零れた言葉が大陸中に知れ渡るのは、それより3日後のことであった。
___________________________________
ほんのり他の方も出てきますがお目溢しください。
ご質問いただいたのですが、検索に乗らなかったのはパスワードをかけていたからと思われます。ご回答くださった方、ありがとうございました。
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すみれいん(プロフ) - 寝なきゃと思い読んじゃいました。何回読んでも良いお話です。話題があると思ったら悲しいお話もあって読み手の心を掴むの上手い…とこのお話が大好きです。多分五感が戻って暫く？したら会合とかあって主ちゃんと出会えるのかなぁと言う世界線も想像しました。 (8月26日 1時) (
レス) @page46 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
MUZUKI(プロフ) - 思わず半日で始めから最後まで読み切ってしまいました笑個人的にとても好きなストーリーです！読んでてすごく楽しめました。面白かったです (7月3日 1時) (レス) @page50 id: a8533ba18a (このIDを非表示/違反報告)
黒灰白有無％(プロフ) - 完結おめでとう御座います!一寸したギャグ要素や真剣要素とても面白かったです特にタイトル回収と皆が夢主を探す所で感動しまいました他にも感動する要素は沢山ありました、特に心に残った作品の一つでこの話&主様とても大好きですこれからも応援します頑張って下さい！ (2023年3月19日 7時) (レス) @page50 id: 00e0ebd256 (このIDを非表示/違反報告)
ひな - 初コメ失礼いたします。きんときさん推しなため、最後のきんときさんのセリフで感動で胸がぎゅっと締め付けられ涙が溢れました。こんなにも素敵な作品を見たことありません。このお話をきっかけに主様の小説が好きになりました。これからも頑張ってください。 (2022年11月28日 14時) (レス) @page43 id: 0fb4dd416b (このIDを非表示/違反報告)
k5t2homr(プロフ) - 初コメ失礼します。設定や展開などがとても面白く何回も読ませてもらっています！！完結となっていますが、他の選択肢や夢主との再会のお話を読んでみたいと強く思っています。。お時間が空いている時で構いませんので書いていただけると嬉しいです！！ (2022年11月2日 20時) (レス) id: 0402d85269 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サンセットマリン | 作成日時：2021年12月31日 11時
