97話 ページ4
彼が向かったのは、王宮の一階にある巨大な厨房＿＿幹部が食べるご飯は基本的にここで全て作られている＿＿の横にある小さな木製扉の先で、どうやら料理長室のようだった。
木の温かみを感じる部屋は、とても可愛らしい。座って、と促されて座った木製の椅子にはパッチワークのクッションが敷いてあり、テーブルの上にはチェックのテーブルクロス。
数分待っていると、彼が木製のお盆に矢張りパッチワークのカバーがかけられたティーポットと、二つのカップ、そしてお皿にのったクッキーを持ってやってきた。真ん中にジャムが乗っている、素朴なクッキー。
「どうぞ。紅茶と、ラズベリージャムをのせたクッキーよ。紅茶にミルクや砂糖は？」
「大丈夫です。＿＿ありがとうございます」
カップを受け取って、少し香りを嗅ぐ。この辺りでは一番スタンダードなもので、特におかしな香りはしなかった。一口口にする。
「……美味しいです！」
「あら、嬉しい」
「本当に美味しいです！＿＿同じお茶なのに、どうして？」
「蒸らす時間や入れ方にコツがあるのよ。良かったら今度教えるわ。＿＿勿論、貴女がアタシの提案を受け入れてくれれば、だけれど」
その言葉に、もう一口飲もうとした手を止める。カップをソーサーの上に置いた。カチャン、と陶器がふれあう。
「あの、矢張り何か勘違いされていらっしゃいませんか？私は、スパイでもないし堅気じゃない訳でもない、普通の人間なのですけど……」
「まぁ、それならそれでも別に良いのよ。重要なのはね、貴女の肝が尋常じゃないくらい座っていること。そして、貴女が幹部様達にそれなりに気に入られていること。この二つの条件がそろっているから、別に貴女がスパイでもそうじゃなくてもどっちでも良いのよ」
「えぇ……じゃあどうして、スパイだなんておかしなことを？……映画の見過ぎですか？」
「一つは貴女にカマをかけてみようと思ったからよ。見事にかわされたけれどね。貴女がスパイならたいした演技力ね。大切にしなさいな。＿＿もうひとつはね、
_______アタシがスパイだからよ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 755人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すみれいん(プロフ) - 114話のお話ってあの動画ですよね…！？違っていたら恥ずかしいんですが、この前急いでみたばっかなのでめちゃくちゃテンション上がりました。ありがとうございます。 (2022年7月19日 21時) (
レス) @page22 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
サンセットマリン - キンコンカンさん» コメントありがとうございます！確かにwwww意図したわけではなかったのですが同列に見えますね……ww (2021年10月1日 13時) (レス) @page50 id: 58697e3d5e (このIDを非表示/違反報告)
キンコンカン(プロフ) - 136話のネズミと虫と幹部が同じ価値みたいに並べられてるの笑ったww (2021年9月29日 22時) (レス) @page43 id: 318aa683f9 (このIDを非表示/違反報告)
サンセットマリン - のんのさん» Twitterに興味を持ってくださりありがとうございます！検索しても出てこない……って、何が原因なんでしょうかね……？ちょっと原因がわからないので、url貼ってみますね。 https://mobile.twitter.com/home です。これで無理ならどうしようかな……？ (2021年9月29日 21時) (レス) id: 58697e3d5e (このIDを非表示/違反報告)
サンセットマリン - そらと。さん» はい！お互い頑張りましょう！！ (2021年9月29日 21時) (レス) id: 58697e3d5e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サンセットマリン | 作成日時：2021年9月16日 8時
