検索窓
今日:71 hit、昨日:32 hit、合計:307,496 hit

80話 ページ34

まるで荷物か何かのように抱えられた私がたどり着いたのは、見覚えのあるシックな木製扉の前だった。

 ここって、と思う前に、ぶるーくさんが遠慮容赦なく扉を開け放つ。中にいた人は、それに反応することなく机に座り、黙々と本を読んでいた。

 反応したのは部屋の掃除をしていた明るい茶色のポニーテールの可愛らしいメイド、イコールバレンシア、つまりレンちゃんで、彼女は小脇に抱えられた私をみて「A?」と小さく声を漏らし、ついで抱えている人間を見て、「ぶ、ぶるーく様!?!?」とほとんど悲鳴に近い焦った声を上げた。その顔が、みるみるうちに赤く染まった。

 何やらパニックになっているらしいレンちゃんに構うことなく、ぶるーくさんが机に座るこの部屋の主、つまりスマイルさんの肩をぽん、と優しく叩く。それで初めて彼が上を向き、「……ぶるーく?」と驚いた声を出す。

 ぶるーくさんは、抱えた私をぽん、と絨毯の上に置いて、スマイルさんに向けて楽しそうに手を動かす。スマイルさんがそれを見て、は?と声を上げた。_____どうやら彼は手話がわかるらしい。




 「俺が?何でだよ、お前が教えりゃいいじゃねぇか。……いや、そりゃ声に出せた方がやりやすいかもしれないが……は、はぁ!?お前何で知って……っ……メイド?……はぁ、お前まだ他の専属のやつ喰ってんのか。いい加減にしないとそのうち刺されるぞ。……何?……いやそういう問題じゃねぇだろお前な……」




 嫌そうになって、困った顔になって、焦った顔になって、呆れた顔になる。

 2人の間に何が起きているのか私にはわからなかったが、最終的にはスマイル様が折れたようで、「わかった、わかったよ!」と言った。ヤケクソみたいだった。

 ぶるーくさんがにこりと嬉しそうに笑って、よろしく、と言いたげにスマイルさんに頭を下げ、私の方を向いて、









  そして、不意にぎゅう、と抱き締めてきた。

81話→←79話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (386 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
747人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

すみれ - 続編おめでとうございます!この作品とても好きです! (2022年10月23日 21時) (レス) @page2 id: a70cb7c9e5 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - あの、ちょいちょき面白くてクスッと笑ってしまう所がありとても好きなお話です。これから続きを読んできます! (2022年7月19日 21時) (レス) @page50 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
まほ(プロフ) - めっちゃこの小説が大好きで、この小説を読むでいる時間が一番幸せです(^-^)これからもよろしくお願いします (2021年9月16日 16時) (レス) id: dab527b906 (このIDを非表示/違反報告)
サンセットマリン - スカ一さん» はい、大丈夫です。よろしくお願いいたします。 (2021年9月16日 6時) (レス) id: 58697e3d5e (このIDを非表示/違反報告)
スカ一(プロフ) - サンセットマリンさん» おはようございます、お世話になっております。ご了承頂きありがとうございます。では、今回の件はこれにて終了とさせて頂きたく思います。また、作者名、作品名を伏せて事の経緯の説明を当方の作品内でさせて頂いてもよろしいでしょうか? (2021年9月16日 6時) (レス) id: c3f5308968 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:サンセットマリン | 作成日時:2021年9月7日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。