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61話 ページ15

「あ"ー……」



 うめき声のような、潰れた蛙のような声が口から漏れる。今は夕方で、ここはきりやんさんの部屋から少しだけ離れたところにある廊下だった。

 手に持っているのはこれから洗濯ランドリーに届けるきりやんさんの衣服。

 よろしくね、とフィーさんに送り出されて対して重くないそれを持って廊下に出た矢先の冒頭の声だ。

 うめき声の理由は簡単で、別に目が見えないきりやんさんのためにお食事を口に運ぶところから着替え、お手洗いへの付き添いなど、あらゆる身の回りの世話をしたことが原因ではない。

 そうじゃなくて、








 「……あまりにもいい人すぎる……」









 そう。この数時間きりやんさんと関わってわかったのは、彼があまりにもいい人だということだ。

 _____おそらく、こちらに相当気を遣っている。目が見えていないにも関わらず、色々なことをしようと奮闘するきりやんさんは健気で、同時に少し哀しい存在でもあった。



 正直、今までのどの幹部よりも、精神的にキツいものがある。



 嫌いなわけでも、苦手なわけでもない。



 ただ純粋に____特にほとんど真実を話せない私の場合____罪悪感が勝ってしまうのだ。嘘で塗り固めた自分の言葉を嬉しそうに聞いてくれる彼の姿に。



 こんなことで悩んでいるとわかれば自国の心がないと言われている彼らに呆れられたり怒られたりするかもしれないが、生憎私にはまだ心がある。いや別に、確実に彼らにないとは言い切らないけど。

 とにかく、罪悪感が大きくて困ってしまった。ごめんなさい全部嘘なんです____と泣き出さなかった私を褒めてほしい。

 きっついなぁ、と呟きながら廊下を進む。








 ……って、あれ?








 そこで、はたと自分が見知らぬ廊下にいることに気づいた。どうやら考え事をしている内に曲がるところを間違えてしまったらしい。

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すみれ - 続編おめでとうございます!この作品とても好きです! (2022年10月23日 21時) (レス) @page2 id: a70cb7c9e5 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - あの、ちょいちょき面白くてクスッと笑ってしまう所がありとても好きなお話です。これから続きを読んできます! (2022年7月19日 21時) (レス) @page50 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
まほ(プロフ) - めっちゃこの小説が大好きで、この小説を読むでいる時間が一番幸せです(^-^)これからもよろしくお願いします (2021年9月16日 16時) (レス) id: dab527b906 (このIDを非表示/違反報告)
サンセットマリン - スカ一さん» はい、大丈夫です。よろしくお願いいたします。 (2021年9月16日 6時) (レス) id: 58697e3d5e (このIDを非表示/違反報告)
スカ一(プロフ) - サンセットマリンさん» おはようございます、お世話になっております。ご了承頂きありがとうございます。では、今回の件はこれにて終了とさせて頂きたく思います。また、作者名、作品名を伏せて事の経緯の説明を当方の作品内でさせて頂いてもよろしいでしょうか? (2021年9月16日 6時) (レス) id: c3f5308968 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:サンセットマリン | 作成日時:2021年9月7日 18時

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