【WT】私はあくまでスパイですので！！【軍パロ】

93話 ページ47

「身辺調査は、簡単に言えば使用人に後ろ暗いことや怪しいところがないかを調べるものです。健康状態や出自、得意不得意、仕事の能力＿＿それら全てを徹底的に調べあげられます。試験と言っても差し支えないかもしれません」


　淡々とした表情で言葉を紡ぐカティアさんに、質問です、と手を上げた。


　「ちなみに、合格？ がもらえなかった場合は＿＿」
　「自分の調査が行われた日の夜には処刑されているでしょう」
　「ひぇ」
　「私も経験したのは一度だけです。あの時は、確か十数人のメイドが処刑されました。ですが、暗殺者やスパイなど、その類いの人間ではなかったので、最近まで調査は行われていなかったのです」
　「そ、そうですか……ちなみに、その処刑された方達は……」
　「幹部様に粗相を働いた人間が大半ですね。まぁ、自業自得な部分もあったとは思いますが」
　「そうですか……」


　グラスを磨くカティアさんの横で、頭に冷や汗が伝うのをひしひしと感じながら皿を片付ける。気を抜いたら震えた手で落としてしまいそうだ。

　「一度に使用人が提出すると流石に数が多すぎるので、Aの場合履歴書などの提出は明後日までとなりましたが＿＿準備は大丈夫ですか？提出が遅れても処刑されかねません。期限は守った方が良いですよ」
　「え、あ、はい。明後日……わかりました」
　「それと、A。ありがとうございました」
　「はい？」
　「Aとお話された後、なかむ様は随分と態度が柔らかくなられました。はじめは困惑していたメイドも徐々に順応してきて、関係はゆっくりではありますが回復しつつあります」
　「あ、あぁ、全然私のおかげとかじゃないですけど、良かったです」
　「まぁ、今回の調査で何人外れるかはわかりませんが」
　「ひぇっ……」
　

　それでは、と言ってカティアさんが厨房を出て行く。入れ替わりに、



　「おっはよー、A！スマイル様から例の件についてお呼び出しだよ！」



　といってレンちゃんがやってきた。

　そういや手話を習うとか言ってた、忘れてた。ラディアさんの言葉通り、今日は一日暇をもらうことができたので、調査をどう乗り切るか作戦を練ろうと思っていたのだが_____どうやら私に休日はないらしい。

94話→←92話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す