Vindemiatrix/1 ページ3
夢ノ咲学院の廊下。朝になったものの大抵の生徒はレッスンや部活の朝練をしている時間帯なので人の気配が無い。
ただ、遠くから聞こえてくる生徒たちの練習に励む声が、私しか歩いていない廊下に私の足音と共に響いていた。
私も本来ならプロデュースをしている時間だ。だが、今日は珍しく朝にプロデュースが入っておらず、それに私が所属しているプロデュース科に今日転校生が来たらしいので挨拶をしようと教室に向かっているのだ。
あえて名前は出さないが、どこかの怠慢教師がプロデューサー第一号として挨拶してこい、なんて言うし。
まぁ実際は私が事前の顔合わせの日を忘れていただけなんだけれど。
「はぁ〜…面白い子が来ないかなぁ…」
_この学院に、新しい風を吹かせてくれるような。
そんなことを考えながら、曲がり角を曲がった時だった。
「………いったぁ」
「あ…!!すいません!!」
女の子とぶつかったらしい。私は膝をすりむいたらしく、若干血が出ていた。
その女の子は、オドオドと私に謝りながら絆創膏を渡してくれた。絆創膏持ってるとか、女子力高いね。
…あれ?
「もしかして、転校生?」
こっちの校舎に普通科の生徒がいるなんておかしいし、そもそもこの子は女の子。
「あっ…はい、そうです!!今日からプロデュース科の2年に転校してきた…えっと、『あんず』です…!!A先輩、ですよね…?」
「うん、そうそう。Aだよ!!」
やっぱりそうだったんだ。
あんずちゃん、かぁ。小さくて可愛くて、女の子って感じがする。少し口下手なのか、頑張って会話をしようとしているのが印象的だ。
「これから挨拶に行こうと思ってたんだよね〜」
「私もです…!あの、怪我、すいません…大丈夫ですか?」
「あぁ、こんなの平気だよ。絆創膏ありがとうね!」
そう言って笑えば、あんずちゃんも少しだけ笑ってくれた様な気がした。
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作者名:kairi | 作成日時:2018年11月26日 21時