魅惑的で不思議 【名前変換オリジナル】

#１９ ページ19

夏休みに入ってから早1週間。いよいよ夏祭り当日となった。

そわそわと落ち着かない気持ちを押さえるため、横にあえて垂らした髪の毛を弄って誤魔化す。

……お団子、変じゃないよね。姿見の前で何度も見ては時計を見る。

今日のために新調した浴衣は白を基調としたものにし、薄紫色の朝顔と群青色の金魚の柄をあしらったもので、かなり気に入っている。

お母さんが貸してくれた、履き慣れない草履に足を通して家を出る。


『いってきまーす』


「気をつけてねー」


町を照らす灯りは提灯のみ。

幻想的な橙色の灯りだけが町を染め上げ、星空がよく見える。

一段一段ゆっくりと石段を登り、待ち合わせ場所に指定されている神社へと向かう。お祭り特有の笛や太鼓の音がだんだんと大きくなるにつれて、心臓の音も大きくなる。

何とか登りきった石段。一旦呼吸を整えるために、朱色の鳥居にもたれ掛かって皆を待った。


『まだかなぁ……』


ぼそっと呟いてスマホを弄る。

カメラのアプリを起動すると、内カメにして髪型を確認。朝顔のモチーフどおしでリンクさせた髪飾りを指でもてあそんでいたら、不意に声を掛けられた。


「ね、君1人？」


『はい……？』


「俺も1人なんだよね〜。一緒にどお？」


『えっと……いや、待ち人がいるので』


「良いじゃん、まだ来ないならドタキャンじゃなぁい？ほら、」


『いっ……っ、止めてください』


ナンパってどう対応するべきなんだろう。

無理矢理に捕まれた手首を締める力はどんどん強くなり、恐怖に見舞われる。

どうしよう、誰か、


「お前、なにしてんの？」

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