そういうんじゃなくて【降谷零】 (ページ45)

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よんじゅうさんページ45

「その子たちが持っていた香水の香りを僕は知っていたんだ。僕の身近な人から同じ香りがしてね…それも二人も」

そう言うと彼女はさらに目を大きく開けてフリーズしたかのようにピタッと動きを止めた

「バーボンとしてA…いや、ラスティに会ったあの日。微かに金木犀の香りがした。そしてもう一人は…」

アイツの名前を言おうとした時、Aがゆっくりと口を開いた

『景光さん…ですか』

薄暗い車内で揺れる彼女の瞳に一瞬吸い込まれそうになったが、目の端で信号の色が変わったことを捉え、顔を前に向けてゆっくりとアクセルを踏んだ

「…あぁ、そうだ。ヒロと会った時もアイツから金木犀の香りがして、香水なんてつけるのか？って思ってアイツに聞いたんだ」

『そう、だったんですね…』

Aは目線を膝に向けて独り言のようにそう呟いていた

「……好きだったのか？」

なぜそう聞いたのか僕にも分からなかった。好き"だった"と過去形なのがあの時とは違うが、ヒロにも同じことを聞いたから？

Aはなんて答えるのだろう。たとえ何と答えたとしてそれはAの気持ちであって、僕がどうこう言えるものではないがなぜか胸騒ぎがする

両手をギュッと膝の上で握りしめ、俯くその顔から表情は読み取れず。
気がつけば目的の場所に着いていた

「続きは中で聞こう…」

俯いたまま彼女は頷いた