よんじゅう ページ42
よく似ている気がした、あの時の景光さんと降谷さんの背中
「お互いに勘違いしてたってことか…まぁ、それがわかって良かったよ」
降谷さんが安堵の息をついてそう言った
そして私の目の前に再び例の物を取り出した
『そ、それ!なんで降谷さんが…!!』
ずっと大切に持ち歩いていたそれ。落としていたことすら気が付かなかったそれを、どうして降谷さんが……
受け取ろうと手を伸ばすと、ひょいと降谷さんが上に持ち上げた
もちろん伸ばされた降谷さんの手に届くはずもない
『ちょっと降谷さん…!?』
「お前には聞きたいことが山ほどあるんだ」
『それで私を釣るつもりですか!?降谷さんの意地悪…』
「いや、もう釣られてるだろ……ほら、返すよ。大事なものなんだろ?」
確かにさっきもう降谷さんに釣られてるなと納得しながら呆れ顔の彼からアトマイザーを受け取った
『ありがとうございます…そうなんです、大切な思い出…って言ったらいいんですかね』
彼のことを全部忘れたくないから、だからこうやって執着してしまっているのだろう
「A、君に見せたいものがあるんだ…きっと君がよく知っている人だよ」
頭のキレる降谷さんはおそらく私と景光さんが親しい関係だったと気づいているに違いない。そしてどうして私がこの香水をこんなに大切だと思っているのかも、降谷さんは知っているのだろう
『分かりました…ぜひ』
「それともう一つ、Aとアイツとの……ヒロとの思い出話を聞かせてくれないか?」
どこか遠くを見るような、懐かしむような、そんな瞳で私を見つめた
『はい…』
ゆっくりと頷くと、降谷さんは「じゃあ行くぞ」と言って私の手を取って歩き出した
『えっ、ちょ、どこいくんですか?』
バッと勢いよくフロアのドアを開き、廊下に出た降谷さんに手を引かれ少し早歩きでついて行く
「僕の家だよ」
『えっ…』
フロアから追い出された風見さんが私たちと廊下ですれ違う瞬間、ギョッとした顔をこちらに向けた
「た、楽しんでください…?」
『何をですか…!!』
しんと静まり返った廊下に私の声が響いた
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作成日時:2024年2月28日 19時