そういうんじゃなくて【降谷零】 (ページ36)

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さんじゅうよんページ36

「……で、その金木犀の香りは彼女の香水ってわけか？」

単刀直入にそう聞くと、ヒロは少し恥ずかしそうに人差し指で頬をかいた

「……俺が、あげたんだ」

予想していなかった言葉に少し驚き、本当に付き合っていないのか？と疑いの目を向けた
出会ってからまだそんなに経っていないのに香水をプレゼントするなんてな…幼馴染の知らない一面を見れたような気がして少し嬉しくなったのを覚えている

「それでも別に俺たちはそういう関係じゃないからな」

「ふぅん…」

「ただ、その子がすごくいい匂いだっていうから…」

それで彼女にプレゼントしたらしい
おそらく今日もこの仕事の前に少し彼女に会ってきたのだろう
だから少し匂いが移ったのかもしれない

その彼女のことを思い浮かべながら話すヒロを見て、ますます彼女に興味がわいてきた

「いつか紹介してくれよ？」

「あぁ、分かったよゼロ」

フッと笑った彼が自ら引き金を引いてこの世を去ったのは、すぐ後の話だ

付き合ってはいないと言っていたが…たった一、二ヶ月しか一緒にいなかったのにヒロはよほど彼女に惹かれたのだろう

……確か金木犀の花言葉は、

"真実の愛"

そして彼女もまた、ヒロと会う時にその香水を付けていたのはきっとそんな彼の想いに答えたかったからなのだろう

甘い金木犀の香りに酔いしれる二人が結ばれなかったのは、運命とでも言うのだろうか

"陶酔"

それもまた、花言葉の一つだったな…