さんじゅうに ページ34
「香水…?」
ちょうど信号が赤になり、ゆっくりとブレーキを踏んだ
チラリと横を見れば、彼もまたこちらを向いている
「いや、少し金木犀の香りがするなって…」
「あぁ、なるほどな。確かにこれは金木犀の匂いの香水なんだけど」
俺がつけてるわけじゃないんだ。と彼は少し嬉しそうにそう言った
つまり、誰かがつけていた匂いが移ったのか?
仕事の仲間?友人?それとも、組織の人間か?
様々な可能性をあげていく中で一つだけ思い浮かべてすぐに消したものを、なぜか彼に問いかけていた
「まさか、彼女か?」
恋人ができたからって報告しろとは言わないが、幼馴染として、親友として、同期としてそういう話はしてくれないのかと少し肩を落とした
「なっ、違うよゼロ…!」
ヒロが明らかに動揺したと同時に信号が青に変わり、僕の意識は運転することに向けられた
別に彼女とかじゃないよ、ち、小さくて可愛いけど…。と聞いてないことまで口走るヒロを見て「はぁ」とため息を着く
「……好きなのか?」
彼の反応からしてその人のことを気になっているのは事実だろう。もごもごと口篭るヒロを見て、こんな顔をさせるなんてどれほど魅力のある人なんだろうと名前も姿も分からない人に興味がわいた
少し遠回りでもしようか
248人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時:2024年2月28日 19時