大切な人を見つけるお話【諸伏景光】

35話 ページ37

降谷side

ヒロは恐らく彼女の名前を呼びたかったのだろう
しかし、呼べなかった
それはヒロの知らない彼女がそこにいたから



「確保！！」



機動隊が一斉に走り出した
20m…10m…2人に近づく光景はまるでスローモーションのように見えた



機動隊の1人が男の銃を握っている腕に手を伸ばした
そして、予期せぬ事態に体勢を崩した男は






＿＿＿引き金を引いてしまった





「Aっ！！」



急いで小柄な女性の方を向いた
彼女の左胸めがけて放たれた弾丸は、彼女に覆い被さるようにしたヒロの肩を掠めた







「うっ……」



「ヒロ！！」




一瞬顔をしかめたヒロだったが、すぐさま床に倒れそうな彼女を体を支えた



「A…！A！！」



恐らく気絶したのであろう彼女＿＿月島Aの名前を叫んだ
それは悲痛な叫びにも思えた



「ヒロ！落ち着け…気絶してるだけだ……それより、お前は大丈夫なのか？」




「あぁ、俺は大丈夫……そっちは？」



ヒロは月島を助けるのに必死だったため男が確保された瞬間を見ていなかったようだ



「2人とも無事確保した…これから忙しくなるぞ」



「そうだな……」



ヒロの表情が少しだけ柔らかくなった

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