安定期８ ver.Ｂ（きょもほく） ページ44
「北斗…？」
しばらく北斗の中にいて、最後の一滴まで北斗の中に出し切り…北斗の中から自身を抜いた。
クチュっと湿った音を立てて…俺を離した北斗の蕾は飲みきれなかった白濁を溢していた。
北斗に声をかけても反応がない。
あぁ、また意識飛ばしちゃったか。
うつ伏せのまま、涙に濡れた頬。
長い睫毛にはまだ涙が溜まってる。
北斗をそっと仰向けにし、シーツに包んで抱きしめた。
「北斗…」
北斗の額に汗で張り付いた髪を撫でた。
そして、涙に濡れた目蓋、頬、唇と順に触れるだけのキスをした。
可愛い北斗。
俺のだ。
俺だけの北斗。
「…孕めばいいのに、な…。そうしたら北斗は俺だけのだって、縛り付けられるのに…」
男同士だからそんなのは絶対に無理だって知ってるけど。
でも心のどこかで奇跡が起こって欲しいと願わずにはいられない。
「安定期か…俺たちに『安定期』なんてあるのかね？」
俺の心はいつも『不安定期』だよ。
北斗もそうだろ？
だから、俺たちはいつも飢えた様にお互いに手を伸ばし求め合う。
「北斗…なあ、北斗の中で『愛の結晶』は出来た？」
どんな形でもいい。
北斗の中で俺を縛りつける『愛の結晶』が出来ればいいのにな。
「…きょ、も、と…？」
北斗がゆっくり目を開けた。
「北斗、目が覚めた？」
北斗に声を掛けたけど、北斗はどこかぼんやり俺を見つめたまま。
「北斗？どうした？」
「…きょも、と…俺…俺の中に、俺たちの『愛の結晶』あるから。俺、大事に持ってるから、だから…大丈夫」
北斗が力の入らない腕で俺を抱きしめてきた。
「あ…北斗…」
北斗はどこまで俺の不安を知ってるのかな。
北斗に抱きしめられ…自然に涙が一雫流れた。
「北斗…北斗、愛してる」
「俺も、大我…愛してる」
俺たちは互いに抱きしめ合い、そして柔らかな2人だけの褥にまた身を沈めた。
end
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作者名：おゆまる
| 作成日時：2020年5月4日 16時
