すれ違い６ 樹side ページ20
「とりあえず、今日はこれくらいにしとく？」
「だね、樹、助かったよ、ありがとう！」
ミュージカルの稽古が忙しくて、ダンスのフリが入ってなかったきょもに今日は個人レッスン中。
「きょもは覚えが早いよね、集中力も凄いし」
「そんなことないよ、みんなに迷惑かけられないから…笑」
きょもの綺麗な額から滝の様に汗が流れてる。
きょも、頑張ってるよな。
「あちー！樹、シャワー浴びよーよ！」
「だな、この後、みんなとYouTubeの打ち合わせもあるしな…」
きょもが暑い暑いと言いながらＴシャツを脱ぎ捨てシャワー室に向かう。
そこで、
俺はきょもの背中に釘付けになってしまう。
きょもの白い背中に、引っ掻き傷があって。
ちょうど肩甲骨あたりに３本の赤い筋。
マジか…きょも…。
こんな天使の様な綺麗な顔してやることやってるんだ。
「きょも…背中…」
あ、思わず口から出ちゃったよ。
「ん、あ？なに？」
「あ、いや、なんでもない…」
「そお？…あぁ…これか…！」
きょもがシャワー室の鏡で背中を確認して、ニヤッと笑った。
「しばらく脱ぐ様な仕事ないよから大丈夫だよね？」
…悪い顔してる。
「なあ、きょもの彼女って…いつも、ソレなの？」
「あ？そーねー、イクときはいつもしがみ付いてくるから…」
なんだよその蕩けた様な顔。
マジで好きなんだ。
「…きょもマジで、好きなんだ？」
「…うん、マジだよ…」
恋人の事を想ってる筈なのに、なぜかきょもの顔が寂しげなのは気のせいだろうか…？
シャワーを浴びて、俺らは会議室に向かった。
会議室のドアが少し開いてて、きょもがそのドアを開けると、その場で立ち止まってしまった。
「？きょも？入らねーの…！」
きょもを見ると、凄い目をして怒りを顕にしていた。
部屋の中を見るとジェシーと北斗がいて、ジェシーが北斗を抱き寄せて首筋に顔を埋めてた。
きょもは、凄まじい怒りオーラと、視線だけで人を殺せるんじゃないかってくらいの鋭い視線をジェシーに向けていた。
薄々は分かっていたけど、
今、はっきり分かったよ俺。
きょもの大切な人は、やっぱり北斗…か。
チラッとジェシーを見たらニヤッと笑った。
アイツ…確信犯だな。
その後、なぜか動揺してる北斗と怒りに満ちたきょもは次々と部屋から出て行った。
あーあ。
この後、こんなんで仕事できんのかよ…。
不器用な『ビジネス不仲』を売りにしてる２人を思いながら、俺はため息しか出なかった。
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作者名：おゆまる
| 作成日時：2020年5月4日 16時
