ほくとの童話〜人魚姫２〜

５３　海中/お城　樹&北斗 ページ6

〜海中〜 樹side


樹「今夜は…満月だ。北斗を迎えに行こう！」

たろ「うん！やっと…やっと北斗に会える…グスン…」

慎太郎が涙ぐんでいる。
自分のせいで北斗が人間に捕まったと自責の念にかられていた慎太郎。
そうだよな…やっと北斗に会えるんだもんな。

高地「…本当に俺は行かなくて…いいのか？」

心配顔の高地。

樹「あぁ、もし何かあった時のために…高地は海にいてくれ。もし何かあれば助けに来てよ！」

高地とは目と目でお互いの意思を確認した。

高地「あぁ、分かった。樹…北斗を頼む。あと慎太郎も…」

樹「分かってる。まかせろ」

高地「…じゃあ、気をつけて北斗を迎えに行ってきて！…待ってるからね、３人で帰ってくるの、待ってるから！！」

高地は半分泣きそうな顔をしながらそう言って、俺と慎太郎を送り出した。

俺は北の魔女様から貰った『華鱗』を大事に持って、慎太郎と海上に向かって泳ぎ始めた。



〜お城〜 北斗side


あれ…いつの間に寝ちゃったのかな？
目が覚めると外は暗く夜になってて、お城の窓からは、真ん丸のお月様が夜空に浮かんでいた。

ついに満月の夜が来た。

結局…『華鱗』は見つからなかった。

『華鱗』が見つからないってことは、今夜が人魚としての最後の日ってこと。
あ、人間としても最後なのか…。

樹たち、浜辺に迎えにきてくれてるのかな？
もし俺が『華鱗』無くしたって言ったら、どんな顔するだろう。
バカだって怒るかな…それとも、悲しんでくれるかな。

大我…もうお別れだね。
大我に出会って…恋する気持ちが分かったよ。
恋するって、ツライね…。
大我のことを思うと今も胸がズキンと痛むよ。

人間に恋をしてしまった人魚。
人魚が人間と結ばれることはないのに好きになってしまった。
恋した人間には、すでに大事なお姫様がいるのに叶わない恋をしてしまった。

人魚の自分は恋した人間を忘れ、海に帰り元の生活に戻るはずだったのに…それも出来ない。

人間として1ヶ月、大我のそばにいれて良かった。

海の泡になっても、大我のこと忘れないからね…。



コンコン

「北斗、入るよ。そろそろ海に行こうか？」

ノックと共に大我が部屋に入ってきた。

「うん、行くね」

俺に手を差し伸べてきた大我の手を取った。

大我がその手をギュッと握った。



お月様が眩いくらいに金色に輝いている。

俺が海に戻る時が…すぐそこまで来ていた。

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