ほくとの童話〜人魚姫２〜

６７　北の魔女の洞窟　北斗side ページ20

人間との混血の卵。
この海で、今までこんな事は無かったと思う。

卵を産むのを反対される？

もしかしたら無事に産めないかも？

どんなリスクがあるか分からない。

でも…どうしても産みたいって思った。

北「産みたい…お願い。この卵…どうしても産みたいです…お願い…」

涙が勝手に溢れてきた。

樹「…北斗…お前、もしかして…お前の純潔奪った人間のこと、好きなのか…？」

樹が辛そうな顔して聞いてきた。

北「…うん…好き。凄く好きだった。だから…産みたい。大我には二度と会えないけど、この子は産みたい…」

樹…ごめん。
どうしても大我との卵…産みたいの。

高地「…北斗…リスクあるぞ？人間との混血の卵を身籠もってるなんて、もしかしたら…お前の体だって…！」

高地が厳しい顔をしながら聞いてきた。

北「…分かってる…俺はどうなってもいい…でも、でもこの卵は…卵は、殺せない…！」

たろ「北斗…泣かないで。そんなに泣いたら…お腹の卵がビックリしちゃうよ？」

北「慎太郎…？」

慎太郎が俺を抱きしめてきた。

たろ「樹、高地…北斗の気持ちを優先してあげようよ」

樹「慎太郎！お前…北斗の体が一番…！」

たろ「分かってる。北斗が大事だってこと。俺だって北斗が大事だよ！でも、その北斗がお腹の卵を大事だって、産みたいって言ってるんだよ？産ませてあげようよ…！俺たちで、北斗をサポートすれば良いだろ？」

北「慎太郎…！」

たろ「高地…樹…お願いします。俺からもお願い。北斗をサポートしてあげて…！」

慎太郎は俺を抱きしめながら高地と樹に頭を下げてくれた。

しばらく俺たちの間に沈黙が続いた。

口火を切ったのは高地だった。

高地「…北斗…体には気をつけて、悪阻が終わったら、しっかり食べるんだぞ？」

北「高地…！」

樹「…今でも…人間は許せない…！でも、北斗の卵は…俺の大事な北斗の子だし、俺の姪か甥になるんだよな？…北斗、何かあったら、いや、何もなくても…俺たち頼れよ！」

北「樹…！」

樹、高地、慎太郎の３人が俺を抱きしめてきた。
俺は３人の温かい気持ちと、優しい温もりに包まれ、また涙が溢れてきて止まらなかった。


魔女「北斗…七日に一度私のところに来なさい。診てあげようかね」


北「魔女様…！」

高地「ありがとうございます」

樹「北斗をお願いします」

たろ「俺が毎回、北斗を連れてきます！」


顔を上げると、そこには俺たちを見つめていた魔女様の優しい言葉と笑顔があった。

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