遅れてきた指輪（blue） ページ6
深夜1時すぎ。
北斗の自宅の裏門でいつものように待っていたが、今夜に限って北斗はなかなか出てこなかった。
いつも時間にきっちりしてる北斗なのに…と、不審に思いながらもしばらく待ち続けていると、真っ白な夜着に黒いコートを羽織った北斗が現れた。
そして、俺を見ると、綺麗な瞳から透明な雫を一つ、二つと溢したのだ。
「…もう、樹と会ったらダメだって…今も…やっと目を盗んで出てきたの。俺、明日からしばらく自宅から出してもらえなくなるんだ…なんで、何で俺たち…結ばれちゃいけないの？」
ずっと一人で泣いていたのか、目が真っ赤になっていた。
松村家と田中家はずっと昔から犬猿の仲だった。
俺たちは互いの家の悪口ばかりを聞かされてきた。
だからまさか、北斗と俺が恋に落ちるなんて…本人たちだって青天の霹靂だった。
でも、好きになってしまったのだ。
秘密にして大事に温めてきた想い。
一生に一度の恋。
その恋がバレてしまったのだ。
俺は目の前で泣く北斗を引き寄せ抱きしめた。
北斗の温度を感じ…やっぱり離せないと思う気持ちを自覚する。
「なあ、北斗…お前、俺と一緒に来る覚悟があるか？」
「じゅ、り…？」
「今みたいな裕福な生活はさせれないし、苦労かけると思う…。だけどお前を一人で泣かせるようなことはしない」
実家から出て、まだ未熟な俺の手でどこまで北斗を幸せにできるか…未知数で、情け無いが『絶対に幸せにする』とは言えなかった。
でも…北斗をこのまま手離す事はできなかった。
きっとここで手を離したら…俺たちは二度と会う事は叶わない。
「樹と…行く…！その手で俺を掴んで、離さないで…！」
北斗は泣きながらも微笑んでいて、その顔からは微塵も後悔がないように見えた。
だけど、一瞬だけ怯む自分がいた。
北斗は本当に俺でいいのだろか…。
「北斗…後悔しないか？」
「バカ…樹…！俺は樹が好き…ずっとずっと一生一緒にいたいのは樹しかいないから。だから…後悔なんかしないよ。どんな苦労も樹と一緒なら…乗り越えられる」
そう言い切り、涙を流す北斗。
「分かった…もう、一人で泣かないで。俺がずっとそばにいる。だから…一緒に行こう！」
俺は覚悟を決め、北斗の手をしっかり掴み一歩を踏み出した。
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作者名：おゆまる
| 作成日時：2022年1月23日 14時
