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明日の大我様と優吾様の結婚式を祝うための衣装が俺だけ作成が遅れていたので、ギリギリの今になって最終調整しているところだった。
「そうでしょうか…？屋敷の皆んなは薄桃色や薄黄色の華やかな色の衣装なのに俺だけは白い衣装を着るようにと大我様がおっしゃって…」
俺も皆んなと一緒の春色の華やかな衣装を着て大我様をお祝いしたかった。
それなのに俺だけ白色の衣装。
これは『雪』色の衣装なのだと…すぐに分かった。
どんなに大我様が可愛がってくださっても、やはり俺は『春の国』には相応しくないのだなと突き付けられた気がした。
「上等な絹だし、レースもとっても柔らかくて極上の物だね。ん？雪模様の刺繍かな…綺麗だね。さすが大我だ。北斗に似合うものがよく分かってる！」
「…そう…でしょう…か…」
「ん？…北斗、もしかして不安なの？」
俺の浮かない気持ちを敏感に感じた優吾様は、優しく俺の手を取り顔を覗き込んできた。
「大丈夫、大我は北斗の事を一番分かってる。だから明日は安心してね？」
「…はい…」
優吾様はおれの頭を優しくポンポンすると、「これから大我んところに明日の打ち合わせに行くから、また明日ね？」って言いながら部屋から出ていった。
「はぁ…やっぱり、このお屋敷には居られないよね…」
優吾様は優しい。
大我様も優しい。
俺はお二人が大好きだ。
でも…大我様と優吾様が寄り添う姿をこれから先もずっと見ていくのは…なんだか辛かった。
それに『雪』の力を持つ俺が、
春の力はとは相反する力を持つ自分が、
『春の国』の王になる大我様の側にいるのは良くない事なのだ…。
もう大我様の側に居てはいけないのだと、随分前から気が付いていた。
…もっと早く出ていかなければならなかったのに、この優しく幸せな生活に後ろ髪を引かれてしまった。
明日の大我様の即位するお姿を見てから出て行こうと思っていたけれど…きっとそれではダメだ、遅いのだ。
明日、大我様が『春の国の王』となられる立派な姿を見てしまったら気持ちが揺らいでしまう。
今夜…しかない！
みんなが寝静まったらお屋敷を出て行こう。
俺はそう決心した。
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作者名：おゆまる
| 作成日時：2022年1月23日 14時
