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仕事が続けられないほど、北斗の体も心も限界だったのだ。
そしてーーー国の斡旋で『番』を作るだなんて…。
確かに『番』を作れば、番にしかフェロモンは効かないし、ヒートも『番』と過ごす事によって楽になる。
でも、国の斡旋なんて、どんなαを当てがわれるか…分からないじゃないか！
30も40も年の離れたαかもしれない！
何人もΩとツガってるαかもしれない！
…北斗を本当に幸せにしてくれるαかどうかなんて分からない！
北斗、北斗…！北斗…！！
手が届かなくなる前に…、
俺がお前を貰ってもいいだろうか…！？
「なぁ、北斗…俺じゃダメか…？」
俺は部屋の隅で震えながら身を守るようにしてる北斗の側に行き抱きしめた。
「こ、高地…！え…？何、何なの？」
「お前の『番』になるαは俺にしとけって話」
「…こう、ち…が…？俺と…ツガうの…？」
「そう」
「むり…ダメだよ…。わざわざ男Ωの俺とツガうなんてことしなくても、高地は女αや女Ωとツガえるでしょ？…同情ならいらないよ…！」
北斗は俺の腕から逃れようとジタバタしながら濡れた瞳で睨み付けてきた。
「同情なんかじゃないよ…」
「同情じゃないなら…なに？！…意味わかんないよ…。いくら抑制剤飲んでいるとは言え、ヒート中のΩのところに訪ねてくるのも意味わかんないし…！…お願い…高地…帰って…！」
「なぁ、同情じゃないなら…なんだと思う…？」
ずっと腕の中で暴れる北斗の力は俺にしてみたら子猫が戯れてるくらいにしか感じなかった。
Ωである北斗はこんなにも力が弱かったのだと初めて知った。
「…そんなの…分からない…分からないよ…」
「北斗…俺は…お前を同僚だって、友達だって思ってた。でも…今はもう無理。お前は同僚でも友達でもない！」
「高地…」
北斗の瞳が大きく見開いたと思った次の瞬間、北斗の顔が悲しそうに歪み…ポロポロと涙が溢れた。
「友達じゃないなら…それなら…もう離して…出て行って…」
「いや、離さない…」
「やだ！は、離せ！離してよ…！」
泣きじゃくりながら「離せ」と言う北斗を一際強く抱きしめた。
「北斗…お前が…好きだ…！もう友達なんかでいられない…！ずっと、ずっと前から…北斗が好きだった。
ずっと近くにいたのに…こんなに細く痩せちゃって…すまない…。俺が…お前を守る…！だから…」
「…こ、うち…？」
「…だから…俺の『番』になって！」
暴れていた北斗が腕の中で静かになった。
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作者名：おゆまる
| 作成日時：2022年1月23日 14時
