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ーーー大我の部屋を出て1か月。
左の薬指の指輪の跡も随分薄れてきた。
あの日、行くあてもなく電車に飛び乗った。
何となく降りた小さな駅の小さな定食屋さんに入り、ハンバーグ定食を頼んだ。
ホカホカのハンバーグを一口食べたら…俺の誕生日に料理に不慣れな大我が一生懸命作ってくれたハンバーグの味を思いだしてしまい号泣してしまった。
定食屋を営んでた老夫婦はとても良い人達だった。
突然泣き出した、いかにも訳ありな俺に親切にしてくれて、なんだかんだで今ではここに住み込みで働かせてもらっていた。
ランチ時間のピークが過ぎ、お店のお客さんが一気に引けてやれやれと一息ついたその瞬間、店のドアがガラガラと開いた。
「いらっしゃいま……！」
「北斗、探したよ…！迎えに来た」
一瞬、
ーーー時が止まった。
目の前には1か月前まで”夫“だった人が立っていたのだ。
「…京本…さん…なんで、ここに…？」
「北斗が俺の奥さんだから。奥さんを迎えにくるのは夫なら当然でしょ？…それと、京本さん、だなんて余所余所しい呼び方しないでよ。北斗も”京本“なんだから」
「…でも、もう、俺たち…夫婦じゃないよ。他人だよ…帰って下さい…」
1か月経って、やっと胸の水面(みなも)が穏やかに落ち着いてきたというのに、またザワザワと騒ぎ始める。
「いや、北斗は俺の奥さんだよ。戸籍だって俺の妻のままだ」
「え？！どうして！…どうして…？…離婚届…出さなかったの？」
俺たちの結婚はーーー契約結婚だった。
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作者名：おゆまる
| 作成日時：2022年1月23日 14時
