愛に堕ちる（blue） ページ5
この細い手首になんでこんな力があるのかっていつも思う。
俺を身動き出来ないようにベッドに押さえつけ、自分勝手に腰を振る樹。
だけど、その身勝手に動いてるようで、ちゃんと俺の弱点を刺激しくるところが樹の凄いところ。
「は…っ…あ…ん…」
無言で、更に加速する動きにつられるように揺らめく俺の腰。
2人だけしかいない密室は、俺の吐息のような喘ぎ声と樹の荒い息遣いしか聞こえない。
俺は樹の敵なの？
まるで樹に壊されるかのような容赦ない攻撃に、もう間もなく限界を迎えそう…。
強く激しい視線に見つめられながら、最後は体の一番奥に熱い弾丸を撃ち込まれ…爆発させられる。
その瞬間、
このまま儚くなってしまいたいと思うほどの力強い抱擁を与えられーーー壊れる…！！
そして、
一瞬の死ーーー。
俺は意識を手放し、
また、
生き返る。
するとそこには、頭のてっぺんから足のつま先まで、溶かすような優しい優しい口付けの雨を降らすあなたがいて。
さっきの激しさはどこにいったの？
あなたの愛を全力で受け止めた俺は身動き出来ず、されるがまま。
「…じゅ、り…？」
絞り出すように愛しい人の名前を呼ぶと、さっきと同一人物なのかと疑いたくなるような優しい眼差しと柔らかな抱擁を与えてくる。
「…愛してる…」
たったそれだけを言ったっきり、
また俺の全てを溶かすような甘く優しい口付けを繰り返す。
この男の、
いつか殺されてしまうのではないかと思うほどの激しい感情と、
ドロドロに溶けてしまうのではないかと思うほどの優しさに溺れ狂う。
「樹…もう一度…俺を愛して…」
俺の言葉を聞いた樹はニヤリと笑う。
そして俺はーーー
自ら這い上がることができない愛の底に堕ちていくのだ。
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作者名：おゆまる
| 作成日時：2022年1月18日 21時
