Sweet × Sweet (ページ28)

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眠る樹を見ていれなくて、樹に背を向けそっとその涙を拭ってると背後から温かな腕に抱きしめられた。

「…なんで泣いてる…？」

寝起きの掠れた低い声。
　

「な、なんでもない…」

「何でもないのに泣かないだろ？…どうした？」
　

今…言うべきなんだろう。

樹を俺に縛り付けてはいけない。

「…あのさ…樹、別れよ…」

「は？！お前…何言ってんの？！」

樹は目がしっかり覚めたのか、急に大きな声を出した。

「…もう無理しなくていいから…他に好きな人できたなら言ってよ、俺、ちゃんと別れるよ…」

「わけわからん！いつ、どこで俺が北斗以外に好きなやつができたわけ？！」

樹に問い詰められ…この間女の子とジュエリーショップに入る所を見た事を白状させられた。

「…まいった…見られてたんだ…」

「うん…見ちゃった…。だからね、俺、ちゃんと別れるから…」

「ストップ！それ以上言うな！ったく…サプライズが…台無しだ…ってか俺が馬鹿だった…」

樹がぶつぶつ独り言を言いながらベッドから起き上がり、机に置いてあるビジネスバックから小さな箱を手に持って俺の隣に戻ってきた。

「変な誤解されて、お前を失うくらいならサプライズはやめた」

「樹…？」

「北斗…結婚しよう」

小さな箱の中には…綺麗なダイヤが輝くシンプルな指輪が鎮座していた。

「樹…こ、れって…」

「北斗が俺を見たっていうジュエリーショップで買った。北斗が見た女は実は俺の幼馴染なんだ。プロポーズの指輪買いたいけど、どこがいいかって悩んでたらいいジュエリーショップがあるからって紹介してくれたんだ。本当はサプライズで渡したかったけど…」

朝日にキラキラ輝く指輪と、ちょっと照れてる樹の顔。

本当に…プロポーズなの？

「…俺で…いいの…？」

「北斗しかいないよ。俺を幸せにしてくれのは…。まあ、YESの返事しか受け付けないけどな」

樹は微笑みながら俺の左手を取ると、ゆっくりと指輪を嵌めてくれた。

幸せが手のひらから零れ落ちたと思ったら、
その零れ落ちた幸せを大好きな彼が掬って元に戻してくれた。

俺の左手の薬指には、幸せが輝いていた。

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