結実（red） ページ25
2週間前から体調が劇的に悪くなった。
症状は、強い吐き気と倦怠感。
でも、俺は病気ではないのだ。
そうーーー俺は妊娠していた。
体調が悪くなった理由はつわりだった。
妊娠発覚は俺には予定外の出来事だった。
避妊だってしっかりしていたのに…避妊は100%じゃなかったんだね。
多分…数%の確率で妊娠しちゃったんだ。
予定外の妊娠だけど、愛した人の子であるのは間違いない。
でも彼には妊娠したなんて言えない。
彼は俺とは恋人だけど、絶対に結婚できない。
仕事で海外を飛び回る一流企業に勤める彼と、その会社が入るビルの清掃アルバイトの俺とでは住む世界が違いすぎる。
スーパーで安売りしていたレモンを一口かじる。
口の中が一気に爽やかになり、一瞬でもあのつらい吐き気が治った気がした。
つわりの時は酸っぱいものなら食べられるって聞いてたけど本当なんだね。
やっぱり間違いなく妊娠してるんだ…俺。
お腹の赤ちゃん…どうしよう…か…。
「はい、ほくちゃん」
ジェシーがレモンのジェラートを買ってきてくれた。
爽やかなレモン味の冷たいジェラートはつわりの俺でも美味しく食べられた。
今日はジェシーと久しぶりの外出デート。
そして、今日が最後のデートでもある。
ジェシーに買ってもらったジェラートを手に持ち、海の見える公園をゆっくり散歩して、大きな観覧車に乗った。
観覧車はゆっくり上がり、俺は段々地上の人々が小くなっていく様子をぼんやり眺めていたら、
「ねぇ、ほくちゃん結婚しようか」
ジェシーが優しく微笑みながら突然プロポーズしてきたのだ。
「え？！…な、なに？急に…」
「ほくちゃん…妊娠してるでしょ？」
「に、妊娠なんて、してないよ…！」
な、なんで…知ってるの？！
妊娠について一言も話してないのに…！
「嘘ついてもだめ。会社で何度か気持ち悪くなってトイレに駆け込んでる姿を見てる。しかもほくちゃんがご飯食べられなくて、お弁当箱にレモンを入れてきて食べてるも知ってるんだよ」
「……」
「だからね、結婚しよう」
「結婚は…しない」
「なんで！？」
「ジェシーと結婚する為に付き合ったわけじゃないから。俺はジェシーとお付き合いできただけで幸せだから…いいんだよ。
お腹の子は俺だけの子だからジェシーとは関係ないよ。だからね、今日で別れよう」
「ほくちゃん！！」
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作者名：おゆまる
| 作成日時：2022年1月18日 21時
