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その日のうちに食道閉鎖に対するオペを行った。手術は夜までかかった。
ymmt「お疲れ様です。術後も落ち着いてますし、後は僕が見るので大丈夫ですよ」
その日の当直だった山本がそんなふうに声を掛けてくれた。
fkr「ありがとう。あとちょっとだけ仕事片付けたら帰るね」
そう言って、光ちゃんの保育器へと足を向けた。小さなその子は、まだ麻酔が残っていてぐっすりと寝ている。小さな身体に付いた大きな傷と、沢山のラインやチューブ。
光ちゃんが生きる可能性が1%でもあるなら、俺は何だってしてあげたい。
そう思って、俺は資料を漁った。
光ちゃんの状態はまるで綱渡りのような危うい状態だった。
点滴から循環作動薬を投与することでなんとか血液循環が維持されている状態。
(※循環作動薬;血圧を上げたり、心臓の動きを強めたりする薬のこと)
呼吸も人工呼吸器がすべてサポートしていた。
強制的に生かされている、そう表現してもおかしくはないそんな状態だった。なんとかこのまま管理をして、体重が増え、心臓の手術を行うことができればまだ望みはある。
光ちゃんの両親は毎日NICUに面会にきた。
「光、今日も頑張ってるね」
そう言って優しく光ちゃんの頭を撫でる。
循環が不安定な光ちゃんは、動いたり泣いたりするのでさえ体力を消耗してしまう。薬を使って眠らせて管理をしていたから、光ちゃんの反応も乏しい。けれども両親はそっと声を掛け、体に触れてあげていた。
光ちゃんが生まれてから1週間が過ぎた頃、それは突然起きた。俺は河村と職員食堂で昼食を取っていた時、胸元のピッチが鳴った。
fkr「はい、ふくら・・・」
『先生!光ちゃんが、』
俺が言い終わる前に、矢継ぎ早に電話口でスタッフの焦った声が聞こえる。
それを聞いて、俺もすぐに立ち上がった。
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Arisa(プロフ) - チーズさん» コメントありがとうございます。続編は波乱の展開となってますのでお楽しみに! (2020年7月31日 21時) (レス) id: 791f405f1a (このIDを非表示/違反報告)
Arisa(プロフ) - 山本瑞生さん» 感想ありがとうございます。少しでも皆様の心に残る作品でありたいと書いているのでとても嬉しいです! (2020年7月31日 21時) (レス) id: 791f405f1a (このIDを非表示/違反報告)
Arisa(プロフ) - レイカさん» くっつけることが出来て私も一安心です!続編もよろしくお願いします。 (2020年7月31日 21時) (レス) id: 791f405f1a (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - コメント失礼します…!いつも楽しく読ませて頂いています。今回のお話本当に最高でした!これからも楽しみにしてます! (2020年7月29日 2時) (レス) id: ceb60ad09f (このIDを非表示/違反報告)
山本瑞生(プロフ) - もう毎回泣きながら読んでいます!続編楽しみに待ってます! (2020年7月28日 21時) (レス) id: fd4f22733f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Arisa | 作成日時:2020年7月12日 18時