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「あ、また痛くなってきた」
「じゃあ大きく息を吸ってー、はい、いきんで!」
ぐっと彼女は力を入れる。
けれども、さっきから状況は大きく変わらない。分娩室に入ってから2時間。最後の最後でお産は進まなくなってきた。
「もうすぐそこに赤ちゃんいるんだけどな・・・」
湊さんも汗を拭いながら悪戦苦闘していた。彼女はハアハアと肩で息をしながら陣痛の合間はぐったりと目を瞑っている。心配そうに彼女の汗を拭いながら、声をかける母親に返事をすることもだんだんできなくなってきた。
丸一日陣痛と戦い続けた彼女はもう体力の限界だろう。
俺は分娩室をでて、河村先生に相談しに行く。
kwmr「で、こうちゃんはどうするのがいいと思うの?」
一通り状況を説明すると、河村先生はそう返してきた。分娩の方針を聞かれたのは初めてだった。
kwmr「こうちゃんが主治医だろ。こういう時、どうしたらいいと思う?」
俺は考えを巡らせる。
ko「えーっと・・・、吸引分娩に切り替えたほうがいいと思います。もう伊藤さんの体力も限界が来ています」
(※吸引分娩;赤ちゃんの頭にカップを取り付け、吸引して出産を助けるお産の方法)
ちょっと自信がなくて、声が小さくなった気がした。そんな俺の背中を河村先生が叩く。
kwmr「一番近くで見てたんだろ。自信もてって!」
ko「はい!」
俺と河村先生は分娩室へ向かった。
ko「伊藤さん、よく頑張ったね。最後少しだけ赤ちゃん引っ張って手伝うから」
そう言って準備をする。
「渡辺先生・・・」
彼女が俺に声をかける。
ko「ん?どうした?」
「・・・よろしく、お願いします」
もうしゃべるのもしんどいはずなのに、俺にわざわざそう声を掛けてきてくれる。
そんな彼女のお産を最後までちゃんと責任を持たなくては。俺は主治医としての使命感を感じた。
ko「もうすぐだから。赤ちゃん会えるまで、一緒に頑張ろう」
彼女にそう返事をした。
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たぴおかみるくてぃー(プロフ) - Arisaさん» いえいえ、お役に立てて何よりです。いや〜この作品何回読んでも感動。何度も読み返すことでどんどんこの作品の奥深さが感じられるんですよ(ちょっとよく分かんないですよね、すみません)やっぱり命を取り上げる作品は考えさせられますね。長々とすみません (2020年10月6日 0時) (レス) id: cf3c86d772 (このIDを非表示/違反報告)
Arisa(プロフ) - たぴおかみるくてぃーさん» 誤字の指摘、ありがとうございます。修正しますね。今も読み返していただいて、ありがとうございます! (2020年10月5日 20時) (レス) id: 791f405f1a (このIDを非表示/違反報告)
たぴおかみるくてぃー(プロフ) - お久しぶりです!読み返してたら、誤字を見つけました。協会→教会ではありませんか? (2020年10月5日 8時) (レス) id: cf3c86d772 (このIDを非表示/違反報告)
たぴおかみるくてぃー(プロフ) - Arisaさん» 続編の更新楽しみにしてます!!私も医療系書こうかな(;−ω−)ウーン (2020年8月1日 20時) (レス) id: cf3c86d772 (このIDを非表示/違反報告)
Arisa(プロフ) - たぴおかみるくてぃーさん» 医療系小説を見かけなかったので、書いてみちゃいました。続編が更新中ですので、ぜひ読んでいただけると嬉しいです! (2020年8月1日 20時) (レス) id: 791f405f1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Arisa | 作成日時:2020年6月25日 20時