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「・・・育てたいな。養子に出すのは嫌だな」
意を決したように、彼女は告げた。
そして、僕は彼女の味方になると約束している。
ko「お母さんと、話をしようか。ちゃんと自分の意見を言わないと始まらないと思うんだ。俺も一緒にいるから」
不安そうな顔だったけど、彼女も頷いた。
診察室に入ってきた母親は、初診の時と同じようにまくしたてるように俺に話しかけてきた。
「先生、お腹の子供は養子に出します。手続きとか、していただくことはできますか?」
早口でそういう母親の態度を見て、彼女は下を向いてしまった。
ko「お母さん、優愛さんの意見も聞きませんか?お腹の子の母親は優愛さんですし」
「娘も同じ意見です。ね、そうでしょ?」
そういって、彼女に同意を求めた。
「・・・違うよ」
小さな声で彼女は異を唱えた。
「え?」
「違うよ、お母さん。私は育てたいって思ってるよ。無茶言ってるのはわかってる。でも、私養子に出すのは嫌なの。だから、お母さん協力してください。お願いします」
彼女は涙を浮かべながら訴えた。母親は驚いたように、娘をみつめた。
「なに言ってるの?ろくに高校も出ていないあなたになにができるっていうの?」
言葉を荒らげる母親に、彼女は何も言えなくなってしまった。俺は口をひらいた。
ko「彼女は確かにまだ高校生です。金銭的にも、子供を育てるという能力的にもお腹の子を育てるにはサポートが必要です。ですが、彼女が納得していない状況で養子縁組の話をすすめることは主治医としてはできかねます」
努めて冷静にそういった。
「お母さん、お母さんが私を妊娠した時どう思った?」
突然彼女は母親に問うた。思わぬ問いかけに母親は少し動揺しているようだった。娘から視線をそらし、しばらく沈黙が落ちる。
「それは・・・嬉しかったわよ。・・・あなたがお腹の中で動くたびに愛おしいなって思ってたわ」
母親は口調こそ淡々としていたが、その言葉には娘への愛が感じられた。
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たぴおかみるくてぃー(プロフ) - Arisaさん» いえいえ、お役に立てて何よりです。いや〜この作品何回読んでも感動。何度も読み返すことでどんどんこの作品の奥深さが感じられるんですよ(ちょっとよく分かんないですよね、すみません)やっぱり命を取り上げる作品は考えさせられますね。長々とすみません (2020年10月6日 0時) (レス) id: cf3c86d772 (このIDを非表示/違反報告)
Arisa(プロフ) - たぴおかみるくてぃーさん» 誤字の指摘、ありがとうございます。修正しますね。今も読み返していただいて、ありがとうございます! (2020年10月5日 20時) (レス) id: 791f405f1a (このIDを非表示/違反報告)
たぴおかみるくてぃー(プロフ) - お久しぶりです!読み返してたら、誤字を見つけました。協会→教会ではありませんか? (2020年10月5日 8時) (レス) id: cf3c86d772 (このIDを非表示/違反報告)
たぴおかみるくてぃー(プロフ) - Arisaさん» 続編の更新楽しみにしてます!!私も医療系書こうかな(;−ω−)ウーン (2020年8月1日 20時) (レス) id: cf3c86d772 (このIDを非表示/違反報告)
Arisa(プロフ) - たぴおかみるくてぃーさん» 医療系小説を見かけなかったので、書いてみちゃいました。続編が更新中ですので、ぜひ読んでいただけると嬉しいです! (2020年8月1日 20時) (レス) id: 791f405f1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Arisa | 作成日時:2020年6月25日 20時