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ymmt「モニター付けてください」
羊水を拭いながら山森さんに声をかける。おそらく僕よりこういう場の経験のある彼女は、僕が言い終わる前にすぐにモニターを装着し始めた。
ほとんど呼吸のない赤ちゃんへマスクバックをする。
ayk「モニター出ました。サチュレーションは62%です」
(※サチュレーション;血液中の酸素の量。通常は90%以上)
数値が低い。
上がれ、頼むから上がってくれ。
そう願いを込めて必死に人工呼吸を続ける。けれども、なかなか数字は上がってこない。もうどうすればいいかわからなかった。
ayk「先生、福良先生から電話!」
そう言って山森さんは僕の耳元へピッチを近づけた。
fkr『山本っ、状況を教えて!』
走って向かってくれているのか、少し息の上がったような声で問われる。福良先生の声にすがるような気持ちだった。
ymmt「えっと、生まれたんですけど、その、泣かなくって。僕、どうしたらいいか・・・」
fkr『一旦落ち着け山本。大丈夫だからっ。今、生後何分?』
大丈夫。
そう言われ、自分も浅くなっていた呼吸を落ちつかせる。少しずつ頭も整理されていった。
ymmt「生後4分です。呼吸がほとんどなくて、マスクバックしています。でもサチュレーションが、60台から上がってきません」
次に福良先生から発せられた言葉は衝撃的だった。
fkr『うん、わかった。そしたら挿管して』
え、僕が?
でもこんなに小さな子に挿管した経験なんて一度もない。隣で見守ってくれている先輩の先生もいない。
なのに、僕が?
・・・いや、無理だ。
ymmt「こんなに小さい子、経験がありません。福良先生が着くまで待つのは」
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たぴおかみるくてぃー(プロフ) - Arisaさん» いえいえ、お役に立てて何よりです。いや〜この作品何回読んでも感動。何度も読み返すことでどんどんこの作品の奥深さが感じられるんですよ(ちょっとよく分かんないですよね、すみません)やっぱり命を取り上げる作品は考えさせられますね。長々とすみません (2020年10月6日 0時) (レス) id: cf3c86d772 (このIDを非表示/違反報告)
Arisa(プロフ) - たぴおかみるくてぃーさん» 誤字の指摘、ありがとうございます。修正しますね。今も読み返していただいて、ありがとうございます! (2020年10月5日 20時) (レス) id: 791f405f1a (このIDを非表示/違反報告)
たぴおかみるくてぃー(プロフ) - お久しぶりです!読み返してたら、誤字を見つけました。協会→教会ではありませんか? (2020年10月5日 8時) (レス) id: cf3c86d772 (このIDを非表示/違反報告)
たぴおかみるくてぃー(プロフ) - Arisaさん» 続編の更新楽しみにしてます!!私も医療系書こうかな(;−ω−)ウーン (2020年8月1日 20時) (レス) id: cf3c86d772 (このIDを非表示/違反報告)
Arisa(プロフ) - たぴおかみるくてぃーさん» 医療系小説を見かけなかったので、書いてみちゃいました。続編が更新中ですので、ぜひ読んでいただけると嬉しいです! (2020年8月1日 20時) (レス) id: 791f405f1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Arisa | 作成日時:2020年6月25日 20時