【イナイレ】猛獣の闇 (ページ5)

今日:8 hit、昨日:1 hit、合計:42,784 hit

5話ページ5

「よお、雷音寺」

　唐突に名前を呼ばれて振り返ると、そこに立っていたのは不動だった。稲妻町を適当に歩いていたからもしかしたらと思ったが、まさかの人物に遭遇してしまった。これは予想外だったな。そう思いながら雷音寺も不動に挨拶を返す。
　軽い足取りで雷音寺に近付き、その肩に腕を回した。振りほどこうかとも考えたが、なんとなくそれは止めておいた。

「ったくよぉ、俺のチーム、ノリの悪い奴らしかいねぇ」

『皆が皆、そうとは限らないだろ』

「ヒュウ、お前とは気が合いそうだ」

　奇遇だな。とは言わないでおく。

　不動はがっかりだぜ。と小言を洩らすが、その顔は嬉しそうにも見える。どうやらなんだかんだ言って楽しんでいるらしい。
　ふらふらしながら歩いていると、不動がその腕を離す。何事かと見てみると、不動は立ち止まって何かをじっと見ていた。その視線の先を追うと、前をこちらに背を向けて歩く鬼道がいた。隣の不動に行かないのか。と訊くとはっと鼻で笑われる。

「行く訳ねぇだろ。なんだって自分から行かなきゃいけないんだよ」

『はは、ま、そうか』

「……お前、意外と笑うんだな」

　不動の言葉に顔を背ける雷音寺。

　先を歩く鬼道はいつの間にかいなくなってしまった。不動は興味を無くしたようにけっと不貞腐れている。

『なんでお前ら、そんなに仲が悪いんだ?』

「……なんでだと思う?」

　知らないから聞いてるんだろう……。少し呆れる雷音寺はそうは口に出さなかったものの、そう言われたのだから一応考えてみる。とはいえど、2人の関係を深く知らない雷音寺が答えられる筈が無い。答えに渋った雷音寺に、不動は楽しそうに笑った。

「ま、今度話してやるよ。今日はもう帰るわ」

『お前な……』

「じゃあな、雷音寺」

『あ、おい』

　そういうところは中学生らしいんだな。雷音寺がそう零す。言ってろ! 不動はそう吐き捨てて走り去っていった。
　そんな不動の後姿を見て、雷音寺はふと少し前のことを思い出した。