【イナイレ】猛獣の闇 (ページ12)

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11話ページ12

くあ、と欠伸を洩らす。雷門中で世界への挑戦をかけて合宿が始まった日の朝、雷音寺は眠い目を擦りながら朝食を摂っていた。つい先程、マネージャー秋の怒鳴り声が響いたのも記憶に新しい。

「前、失礼するよ」

『ああ』

　ぼんやりしているところを、トレーを持った基山と緑川が雷音寺の座る席の前に座った。眠そうだね、と笑った緑川に、雷音寺は少し恥ずかしそうに目を背けた。

「昨日はよく眠れたかい？」

『見ての通りさ』

「へえ、雷音寺でもそんなことあるんだね」

　日本代表に選ばれたからと言えど、雷音寺だって中学生だ。嬉しさと期待に眠りに就けない時だってあるさ、と呟く彼に、2人は短く笑った。思い当たることあるのは言わないでおいた。

　窓から通り抜けてくる風を、青い空を、視界に映す。どこまでも澄み渡る晴天に、思わず感嘆にも似た息を吐き出した。物思いに耽っていると思ったのか、緑川はそんな雷音寺の横顔を眺めながら静かに味噌汁に口をつけた。

　朝食を摂り、小休憩を挟めばいよいよ練習が始まる。
　ついに日本代表の証である、左胸にイナズママークの付いた青いユニフォームが配られ、それに身を包んだ彼らに、マネージャー陣は嬉しそうに、また興奮の抑えきれない様子だ。

「円堂さ―――んｯ!!」

「虎丸!」

　そのグラウンドに響き渡る爽やかな声に数人が振り返る。肩に掛けた鞄を揺らしながら全速力でこちらに向かってくるのは、宿舎に泊まることに首を振った宇都宮だった。

「虎丸、おはよう!」

「おはっ、おはよう……ございます……!」

　円堂の前で立ち止まると、宇都宮は肩で激しく息をしながら挨拶を返す。なんでも、行き当たる信号全て赤で、このままではと急いで走って来たそうだ。

「だからそんなに無理して家から通わなくてもここに泊まればいいのに」

「ここのご飯、すっごく美味しいんスよ!」

　そう言ったのは緑川と壁山だ。だがその言葉に宇都宮はなんだか曖昧に濁して、それから自分の部屋でないと眠れない、と答える。その表情は少し赤くなっていた。

「大方、ママに子守歌でも歌ってもらってんじゃねぇのか」

　そこに、不動の一言。冷たい言葉にメンバーの表情が濁った。

「気にすんな! あんなの、言わせときゃいいんだよ」

「……はい」

「なんでこんな奴が代表に選ばれたんだろうな……」