【イナイレ】猛獣の闇 (ページ1)

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1話ページ1

　鼻をくすぐる清涼な風が吹き荒れる。緑色に染まった木の葉が奇麗に整備されたグラウンドを撫で、そして遠くへ飛んでいく。

　ここは雷門中。

　日本中のサッカーファンの少年たちがここへ来ることを憧れる、いわば夢の場所。
　フットボールフロンティア、通称FFを勝ち抜き、そして優勝。さらには宇宙からの侵略者、エイリア学園を打倒した生徒も通う学校だ。

　大きく息を吸って、吐く。自分でも驚くほど緊張していた。だが、そこには不思議と心地良い何かがいた。門の前に立つ雷音寺は意を決して、雷門中の門を潜って行った。

　しばらく進んでいると、体育館だろうか、入り口には靴が乱雑に置いてあっておそらくここが集合場所。半開きになったそこに身体を滑り込ませると、もうすでに何十人もの少年たちが集まって談笑している。
　どうしたものか、としていると突然「あ――!!」と誰かが叫ぶ。

「おっ、お前、もしかして……」

　人混みを掻き分けてこちらを指さす少年が、左胸に沖ノ山、と書かれた山吹色のジャージに身を包む雷音寺の前で立ち止まる。

「やはり来たか、雷音寺!」

「やっぱそうだよな!? やっぱ、雷音寺なんだよな!!?」

『ああ、そうだよ。円堂』

　――円堂守。言わずと知れた、有名人。その隣の鬼道も当然有名人だ。

　二人を見ていた周りの少年たちも数人近寄ってくる。その誰もがエイリア学園との戦いで衝突した人物だった。

「お前も、響木監督に呼ばれたのか!」

『……いや、少し違うんだ』

「え?」

「皆揃ってるか」

　鋭い声が響いた。

　それまで少し騒がしかった体育館が急に静まる。扉を開けて入って来たのは、マネージャーの三人を連れた響木が。皆がそこへ向かう中、鬼道が突然飛んできたボールを蹴り返すと難なく受け止める男に顔を歪めた。
　元真・帝国学園の生徒、不動明王。楽しそうな――しかしどこか嫌味を感じる――笑みを浮かべながら足元にボールを落とす。

「不動! 何の真似だ!!」

「アイサツだよ……アイサツ。洒落の分かんねぇ奴」

　怒鳴る鬼道に不動は気にした様子もなく、寧ろ鬼道の反応を楽しんでいるようだった。
　真・帝国学園を知るメンバーは不動を強く睨む。

「響木さん、まさかあいつも……」

　不動を知る人物の一人である佐久間は傍観していた響木に目をやり、そう問いかける。しかしそれに答えることなく、響木はにやりと笑うのだった。