31.あと少し ページ31
隠が現場に着いた後、話していた通りに俺たちは帰路を歩いていた。
「お前、今日は大丈夫そうだな」
「えぇ。実弥が居てくれたお陰で私は体力をあまり使わずに済んだし、早く終わったから」
褒められたような言い方は、久しぶりで慣れなくて何処か照れ臭い。
「そうかィ…」
頼りにされていると感じたとき、ふと匡近を思い出した。
いつか、お前も………
「───実弥」
呼ばれて思考が現実に引き戻される。
「いつもありがとう」
「急にどうしたァ」
「一緒の任務のとき、送ってもらってばかりだから…」
調子狂うこと言うんじゃねェよ。
「はっ、途中でぶっ倒れられて鬼にでも喰われたら胸糞悪ィだけだァ………」
そう口にすると「ふふふっ」と笑う声。
「やっぱり実弥は優しいわね」
「だから、そんなんじゃねェよ」
クソッ。
………こいつといるとやっぱり調子狂う。
ザッザッと自然と歩みが早くなる。
少しして蝶屋敷が見えてきた。
「実弥?」
何処かとろんとした声で呼ばれて振り向く。
「あァ?」
「ごめん、急にきた…」
「は?」
「あと………よろしく、ね…」
にこっと笑った直後に膝から崩れ落ちそうになる琴音。
「ッ!」
それを認識した瞬間には素早く足が動いていて、彼女の体を抱え込む。
すーすーと規則正しい寝息に「はぁーーーっ」と深いため息を漏らしてその場に座り込んだ。
あと少しだったんだがなァ………
体勢を整えて、彼女の体を横抱きに抱え直す。
ずかずかと敷地内に入って玄関を上がると蝶屋敷に入り浸っている隠が出て来た。
「風柱様」
オレを目にするやさっと前まで来てかしずく隠。
「コイツを頼む」
一言だけ告げて、「はい」と頷いたソイツに腕の中で眠る彼女を預ける。
何も知らずに気持ち良さそうに眠るその姿をちらりと見て、それから屋敷を後にした。
77人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月見(プロフ) - おしゅらさん» ありがとうございます!ゆっくりとマイペースで更新頑張りますね(*^^*) (2021年10月13日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
おしゅら - ゆっくりで構いませんよ(*´ー`*)気長に待っていますので月見さんのペースで更新なさってください(^^) (2021年10月13日 18時) (レス) id: 2609acdfa8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月見 | 作成日時:2021年9月12日 12時